再生への旅

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zoom RSS かつて雲水がいなくなったことがある大乗寺

<<   作成日時 : 2011/09/18 04:32   >>

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これやこの百万石の良夜かな 玉宗

金沢大乗寺は越前永平寺三代徹通禅師開創の由緒ある専門僧堂である。今も昔も、曹洞宗二大本山の傘下では歴史的にも特異な位置付けをされてよい修行道場であり、現在まで連綿と多くの鉄漢、老宗師を輩出している。その大乗寺に修行者である雲水が一人もいなかったときがある。

昭和三十七年のこと。当時の住職は松本龍潭老師。老師は石川県津幡の出身で、駒沢大学卒業後仏門に入り、同県富来町の龍護寺や富山市の光厳寺の住職を経ておられた。大乗寺前住職であった清水浩竜老師の後を継いで第六十八代住職となったのがその年の四月であった。昨年までは十人前後の雲水がいたが、その後も減り続け、「宗立専門僧堂」の看板も下ろさざるを得なくなり、宗務庁からの補助金も打ち切られた。その年の旧盆までは三人いたのだが、一人が病気になり、二人は師寮寺へ送行してしまった。

当時の松本龍潭老師が新聞記者に語った言葉が残っている。

<昭和37年11月26日北国新聞夕刊より>

「昔は雲水も多くいたそうですが・・・」

「江戸時代はこの寺に百人もの雲水が集まっていたといいます。昔は武士になるか、坊さんになるかが出世の早道といわれました。これも経済的な支えがあったからこそです。しかし、人間は自分の個性を知って適した職業につかねばなりません。だれも坊さんになりたがらないのは困りものですが、人間は経済をはなれては生きていけないのです」

「というと、経済的にお苦しいわけで・・・」

「ええ、だいたい禅寺は檀家がなくあったところで実にわずかです。この寺も檀家は六十軒ぐらいです。しかし、貧乏寺の方がいいと思います」

「なぜですか・・・」

「だれからも、しばられませんから」

「で、こんな寺でさびしいということは・・・」

「いえ、そんなことはありません」

「いまの生活で悩みは・・・」

「そんなものあったら大変です。今のままでなんの不服もありません。これがあたりまえです」

周囲の心配をよそに、老師の日常は朝の勤行から始まり、坐禅、朝食、伽藍の掃除。時間があれば禅書を読み、酒も煙草も囲碁将棋も嗜まず、檀家さんのところへ遊びに行くこともない。

「寺院は心で守ります。雲水がいなくても十分やっていけます。それに信仰篤い市民によって大乗寺は維持されていくでしょう。何の心配もいりません」

「雲水がいなくても坐禅堂があります。パチンコをしたり、バーへ行ったり、スリルやツイストに明け暮れるのが現代人のひとつのタイプなら坐禅するのもひとつのタイプです。毎月第二日曜日に参禅会を開いています。いつも二十人前後の人たちが集まってきます。毎年夏には中高校生が団体で坐禅をし、静寂な雰囲気に浸っていきます。坐禅は無念無想にならなければいけません。気軽に坐禅に来てほしいものです」

そのような老師の「個」「一人に徹する生き方」をしたって雲水もまた参集し始める。その後の大乗寺は禅ブームの思潮の中で参禅の寺として有名になる。現在までも続くその僧俗へ開かれた参禅の精神には、当時の松本老師が一人でも続けていた参禅会は勿論のこと、決して揺らぐことのない平常心に貫かれていることは間違いない。

この松本龍潭老師の会下に集まった雲水や法系の中に、前曹洞宗管長・板橋興宗禅師や現・総持寺祖院監院今村源宗老師などの龍象が輩出されるのである。法統の徒や疎かならざることを目の当たりにする思いである。

広い坐禅堂で一人で坐禅をする松本龍潭老師。私などには、ここにも禅僧の面目躍如たるものを感じる。






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コメント(4件)

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おはようございます。
2008年9月13日、郡山立美術館で
「寺山修司◎劇場美術館」を見てから始めた
私のブログ「てらやまへメール」ですが
この度3000記事目をUP出来ました。

初めは1日1首と思っていましたが・・・・・
3月の震災以降自宅に籠ることが多くなって
パソコンに向かう時間が加速度的に増えてしまい・・・・・
さらに最近は羞恥心も失い?思いついたら
片っ端から入力、推敲という言葉も忘れています。

先月あたりから、3000という数字がちょっと
気になり出して(イチローか?)
昨日がその記念すべき日になったのですが
始めてから丁度3年が経過していました。

ご親切なコメントを頂戴することが出来て
続いてきたのだと存じます。
本日は改めてお礼申し上げたく
❤から「ありがとうございました!」
いらくさ
2011/09/18 04:46
玉宗さん、
いらくささんおはようございます。
玉宗さんのブログでいらくささんのことを知り、何時も見せていただいています、
3千記事おめでとうございます。

そういえば・・嫁してから宗教が
変わりましたが、亡き父母、また私達は
曹洞宗の檀家です。
たか子
2011/09/18 10:27
いらくささん、記事の3000回達成おめでとうございます。いつもどこからこんな発想が湧き出てくるのだろうと感嘆して拝見しています。(イチローか?)という件、思わずウフッとしてしまいました。これからもその困難の中ではありますが、沢山詩を書いて楽しませてください。
玉宗さん
興禅寺に座禅を組むツアーとかないかなと思っています。
花てぼ
2011/09/18 12:55
いらくさ様。
3000記事、おめでとうございます。思えば私の3年目に入っているのでした。碌でもない記事をこれからも出し続ける所存。(笑)

たか子様。
そうでしたか、ご実家は曹洞宗でしたか。
お目が高い!

花てぼ様。
そうですね、いらくさ作品は感性豊かで、詩的世界を見せてくれます。世に出てほしいですね。
坐禅ツアーですか・・・やめておきましょう。団体は苦手です。お寺も狭いですし・・・畑作務も忙しいし・・・(^^;

ひとりふたりなら対応出来るんですがね。
薩摩芋の蔓のきんぴら美味しく出来たようですね。
来年は私も挑戦します・・する筈です。(笑)
合掌
市堀
2011/09/18 20:49

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