再生への旅

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<<   作成日時 : 2012/03/06 04:08   >>

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啓蟄の雨音に耳澄ましけり 玉宗


能登半島地震以後、地元を離れ、大阪で暮らしている一人息子の元へ移り住んだ檀家の九十歳を超えられたおばあちゃんがいる。半年前から寝たきりになり、息子さんから「万が一のとき」の相談を受けていた。息子さんは震災数年前に奥さんを亡くされ、単身大阪で暮らしていた。当初、菩提寺の住職である私が大阪に駆け付けることに話を纏めていたのだが、つい最近、生まれ故郷へ連れて帰り事に臨みたいと伝えて来られた。

おばあちゃんが一人暮らしをしていた自宅は震災で全壊した。地元に残りたい思いは強かったようで、大阪へ行ってから「淋しい思いをしている」といった内容の手紙を何度か戴いたことがある。
輪島にいたころから、住職である私を可愛がってくれた檀家さんで、何かにつけて声を掛けて戴き、励まして戴いた。

年老いてから故里を離れ、他郷暮らしへシフトする人生模様は、送る方も切ないものがあったが、息子さんと二人で新しい生き方が出来るということでもあり、人間幾つになっても新鮮な日常こそが人生を豊かにしてくれるでしょう。といったようなことをアドバイスしたことであった。然し、余命幾ばくもない事ここに至って、矢張り故郷で供養してあげたいという息子さんの思いを伝えられて、言葉に詰まる私であった。
被災後の大阪での日常が、おばあちゃんや息子さんにとってどのようなものであったのか、余人には窺い知れない現実を改めて付きつけられた思いである。

幸いなことに、息子さんは孝行息子のようであり、お寺のお参りごとも真心込めて尽くすような人柄。父親亡きあとの母親の苦労と愛情を受け止めて生きて来られたのであろう。おばちゃんも又、家族の絆を大切にし、且つ絆されないような人物である。ひとりでも生きて行ける、といった心根を持っている様なところが窺えていた。然し、震災で家を失くしたことは、二人にとって新たな人生の機縁、展開となったことは否定できない。そして、大阪での親子二人暮らし。やがて母は床に伏し介護の日々を重ね、今末期を迎えようとしている。故郷へ連れて行きたい、という息子の孝行心は痛いほど私には共感出来る。

孝行息子であることは間違いない。そして、おばちゃんも又、「子孝行」な母親であると私は言いたい。孝行とは何だろう。親子も又、一期一会の今生の縁である。この世に生れて独り立ちするまで子は親の血肉を頂いて成長する。そして、身心ままならず老いていき、やがて死にゆく人間。一人の例外もない命のあり様。


老いては子に随えというが、老いてままならぬようになったら子に甘えればいいのである。子に介護してもらえばいいのである。子も又、老いた親の面倒を見させてもらえばいい。面倒をみてやるのではない。子が否定しようがしまいが、育てて貰った事実がある。恩がある。そして、親には子を育てさせて貰った事実がある。恩がある。孝行とはそのようなお互いの今生の恩を忘れない人間の真心を尽くすことではなかろうか。誰に褒められたいがためにすることでもなく、誰に責められるようなものでもない。命のあるがままを全て受け入れること。信仰を持った人間の当然の帰納。

「絆」とは他人がとやかく言うべき筋合いのものではない。目に見えない心の通い合いは当事者でなければ自得できないだろうし、自得しなければならない。「孝行」とは、そのような目に見えない「命の繋がり・絆」を手繰りよせることにも思える。出家した私のような親不孝者が言挙げするのも憚れるのだが、それもこれも、「自己の世界」という「大いなるものと一体」である「命」を受け入れんがためでありたい。







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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
子と居ればそれだけで良し磯菜積む  よし
yoshiyoshi
2012/03/06 06:54
雨音に耳を澄まさば 戸や啓く
いのちの蔵のありがたきかな
貧女の一灯
2012/03/06 08:35
yoshiyoshi樣。
そうですよね。共にいる事の幸いに勝るものはありません。

貧女の一灯樣。
お歌にはいつも啓蒙させられます。感謝。
市堀
2012/03/09 05:33

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