再生への旅

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zoom RSS 初めての托鉢!

<<   作成日時 : 2012/04/16 04:08   >>

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墨染の袖ひらひらと春闌 玉宗

總持寺祖院専門僧堂の托鉢は毎月一日、十五日、二十五日の三回である。三月末から修行に行っている倅にとって、昨日は初めての托鉢であった筈である。
上山前に托鉢の装束、着こなし方を伝授してはいたが、慣れない環境と時間の中で戸惑うであろうことが大いに予想される。

ということで、昨日は朝から私も夫人も何気ない素振りをしていたが、そわそわしているのは阿吽の呼吸で隠しようもなかった。お寺の桜が開花した嬉しさもどこ吹く風。何故なら、十五日の托鉢は興禅寺の前の總持寺通りを歩くことになるからである。出発は午前九時の筈。山門前で待っている勇気もなく、二人とも通りに面した庫裏の障子を十センチほど開けて托鉢の行列が通るのを待っていた。盗み見る態の格好である。ブレーメンの音楽隊ではないが、私の頭の上に夫人が顔を載せているといった図を想像して戴ければいい。

耳を澄ましていると鈴の音が聞こえて来た。網代傘を被り、左手に応量器を捧げ持ち、右手で鈴を振る。口に「準提陀羅尼」を唱えて歩くのが祖院専門僧堂の托鉢作法である。喜捨を受けると、施主の前に立ち止まり大きな声で回向する。新到さんは比較的先頭を歩くことになるが、僧堂によっては慣れないことを考慮して真中の位置をキープさせることもある。祖院の場合は先頭であろうと見当をつけて、二人とも息を殺し、眼を見開き、耳をダンボにしていた。

「ああ〜、来た来た。お父さん、宗よ、宗が来るよ!」

「・・・・・・」

実は、夫人は先日、祖院のご詠歌の稽古で会話は出来ないが、倅に会っている。私は上山以来の倅の姿を見ることになるのだ。それも通り過ぎて行く姿である。一目見て彼と解ったし、声もまた彼のものである。どことなく声も野太くなったように聞こえたのは気の所為か・・・。着こなしも新人らしく初々しい。ちゃんと作法通りに応量器を目の高さに捧げ他所見をせずに歩いて行った。興禅寺の前では山門の方へ体の向きを変え、歩を止めて頭を下げた。師匠の寺だからということではなく、托鉢の道中では神社仏閣の前を素通りしてはならないと教えられたのであろう。

「ん、いいじゃないか・・・・」

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その筋の信頼できる情報によると、倅は比較的真面目に、礼儀正しく修行しているらしい。脇目もふらず歩いてゆく姿を垣間見て、それも得心できた師匠である。
はしゃいでいる夫人の横で私はなんだか脱力というか、倅に申し訳ないような気分になってしまった。親ばかの本音である。

「初心を忘れるなよ・・・」

誰に言うともなくそんなことを祈っていた。

目と鼻の先で修行しているとは言え、親であり、師匠の手を離れている現実を目の当たりにしている。次回の托鉢では盗み見ることなく、夫人と共に喜捨をしてあげようと思っている。





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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
喰わねども明日が気になる春大根  よし
yoshiyoshi
2012/04/16 07:04
 いいお話ですね。思わず涙腺が緩くなってしまいました。かさかさしていた心にしみ通っていきました。
くろちゃん
2012/04/16 07:58
上の方・・と同じです。心温まるお話で、貰い泣きしてしまいました。
たか子
2012/04/16 09:36
朝、コメントしましたがUPされていなくて残念です。「実は投稿に失敗」というメッセージが何回か出てついには受け付けられたのですが。とにかくみなさんがお書きになっていますようなこと、感動で嗚咽してしまったことを書きました。
花てぼ
2012/04/16 17:29
両親から喜捨を受けたら、どのようにするか、先方も考えているでしょう。忘れられない日になりますね。それぞれの新学期。
志村建世
2012/04/16 22:08
みなさん、泣かせたりしてすみません。
情を超えた彼岸へお連れしなければならないのに、絆されるような内容になってしまいました。
師匠として試される日々を送っております。
ありがとうございました。
合掌

市堀
2012/04/17 13:34

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