再生への旅

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zoom RSS ある住職の感慨

<<   作成日時 : 2012/06/22 04:12   >>

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夏至といふ峠に似たる気だるさよ

平成三年の春に興禅寺の住職となったのだが、なるについては私の背中越しにやって来たか如き「ご縁」があった。

当時、私は輪島市内の永福寺徒弟であり、夫人と子供を残し三十歳過ぎてまた雲水として祖院に安居していた。まだ興禅寺の存在すら知らなかった。前住は当時祖院監院鷲見透玄老師が兼務されていたのである。兼務とは言え実際のところは無住状態で、お寺を使用するときだけ鍵を開けるという状況であった。偶に町内の葬儀や催事で出入りがあったようだが、お堂も境内も荒れていた。少ない檀家さん達で智慧を絞って護って来てはいたのだろうが、住職が常時住んでいないということがその大きな要因になっていたことは争えない。当時はまだ少子高齢化といった言葉も聞かれていなかったが、興禅寺のような小さな荒れ寺に誰も好き好んで入りたがらなかったらしい。

ある日、監院老師は安居中の私を監院寮に呼び出しいつもの調子で前触れもなく次のように切り出された。

「あなた興禅寺に入りなさい。ああ、よかった。これで檀家さん達も喜ぶことでしょう。」

有無を言わせないといった調子。言われた本人は狐に抓まれたような顔をしていたに違いない。これも後に知らされたことだが、老師は自身高齢という事もあり兼務寺の後事を託す後継者を探されていたのである。それにしてもである。偶々私に白羽の矢が当てられたのだが、その理由を御本人からは竟に伺うことがなかった。
少し自慢話めくが、当時老師のお傍に侍られていた方から次のようなことを亡くなられた後に告げられた。

「老師は雲水だったあなたの作務の様子を感心されていましたよ。」

いつの間に見られていたのか知らないが、「作務と托鉢と坐禅ができればそれでいい」といった単純な人間であった私である。当然のことを認められて悪い気はしなかったが、とくに褒められた気もしなかった。

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そんなこんなで正式に興禅寺の住職となり、その年に普山式もすませた。鷲見老師は翌年の夏に亡くなられた。私は住職となった間もなく大事な支えを一つ失くしたのである。それでもへこたれないでやってきたのには吾ながら呆れている。知らぬが仏。怖いもの知らず。度し難い単細胞。

それでも住職になった年にある老僧から次の様なことを言われた時は流石に開いた口が塞がらなかった。
「君、興禅寺をいくらで買ったんだい?」
「・・・・・」
私には老僧の言っている意味が直ぐには理解できなかった。そのような案件が宗教界にもあることを知ったのは数年後の事である。私はびた一文払っていないし(払う金もない)、鷲見老師の名誉にかけてもそのような馬鹿げた、荒唐無稽のことなどあろう筈もなかった。

私の知らないところで様々な毀誉褒貶があったことを知るのもその後のことである。
プレッシャーがなかったと云えば嘘になるだろう。その後の有為転変を省みれば住職としての羅針盤が狂っているが如き有様にも見えて来る。それを思えば私を信じて付いて来てくれた檀信徒には忸怩たる思いがあったし、亡くなられた鷲見老師には目を掛けて戴いたことの感謝以上に、申し訳ないと云う思いが付き纏っている。。

そのような中で出遭った能登半島地震での被災。興禅寺再建の、なりふり構わぬ歩みは、そのような次第の御恩師や檀信徒への報恩の思いもあったのである。そしてこの二十有余年を総括すれば、住職としては勿論、一人の仏弟子としての再生の日々でもあったことを何度でも告白しておきたい。

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「夏至逍遥」


屈託も秘密もなくて花南瓜

紫陽花の彩に出にけり溺れけり

水を打つ地べたのやうな雪駄履き

雲水の羽根のやうなる夏衣

夏至といふ重たき空が捲れけり

雲水に貰はれていく烏の子

夏燕空を囃して戻りけり

膝揃へ飯喰う男朝曇り

本堂の庇が好きで夏燕

噛むやうに牛の乳飲む夏至の朝

夏至過ぎてしまへり思ひ出せぬなり

夏至といふ空に栞のやうなもの











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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
羽抜鳥世は皆馬鹿で吾は間抜け  よし
yoshiyoshi
2012/06/22 08:21
yoshiyosh樣。
極楽を見て来たやうな羽抜鶏 玉宗
市堀
2012/06/25 11:52

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