再生への旅

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zoom RSS 今日の諸法実相・見えないものが見える?!

<<   作成日時 : 2012/12/30 05:06   >>

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蒸饅頭の湯気の向うに今もなほ 玉宗

年の瀬も押し迫った昨日、ある家族がお寺にやって来た。

50代の夫婦と夫の母親の三人。彼等は現在同居している。20年前に連れ合いを亡くして80歳になる母親が最近「霊を見る」ということで相談にきたわけである。夜、蒲団に入ると枕元に立つのだと云う。外出先から戻ると炬燵に入っていた気配があったりするのだという。息子はそんな母の言うことを「気の所為だ」ということで取りあわないでいたのだが、毎日のように「霊との遭遇」の状況を語るのに閉口しているようだった。嫁は終始無言で事の成り行きを窺っているといった感じであるが、内心は困っているのでろう。

母親には見えており、息子夫婦には見えていない事実がここにある。母親の見えているという事実を私は否定はしない。それは否定のしようがないからだ。夢を見た人にとって「それ」は現実である。控え目に言っても現実に等しい体験である。そのような「見える能力」「見えない能力」もまた、それぞれの命に授かった領域のものである。
「霊」に関しては、「客観的に見える、見えない」といった不毛な議論より、見えたことで何が不都合なのか、見えないことで何が都合がいいと云うのか、そのような諸法の実相や妄想の事実を再検討した方が余程お互いの為になるというもではなかろうかと私などは思っている。

依頼されたご祈祷のお勤めを終えた後、私は母親に言った。

「お母さん。
いい息子さんと嫁さんですね。お父さんが亡くなった後、お母さんの面倒を見ながら今日までお家を守って来たことに、お母さんも有難く嬉しいことでしょう。あの二人にはお母さんが見えているものが見えないのです。そして、見えたことで困惑しているお母さんを目の当たりにして哀しい思いをしているのですよ。子供たちを哀しませたり、困らせたくはないでしょう?心配の種を子供といえどもまかないでください。それは親のわがままですよ。人の見えないものが見えたり見えなかったり、罰が当たるとか、祟りだとか、なんだとか。それはみんな今のお母さんのこころの反映です。誰の所為でもありませんし、誰も代ってはくれません。今あるいのちは霊とか先祖様、ほとけさまに守られてあるものです。何が見えようと起ころうとすべてお任せすればいいのです。そういう意味でははっきり言いますが信仰が足りません。私と約束して下さい。これからは「見えたこと」を二人には言わないようにしましょう。その代わり私がいつでも聞いてあげますから。それを約束して下さい。」

そして次に息子夫婦にも次のようなことを言った。

「どうも、お母さんは一人で家で留守番をしているのが淋しいようですね。足も弱くなってきて思うように外にも出られないようですし。お二人ともお仕事をしているので大変でしょうが、できるだけお母さんが見ている世界の話を興味を持って聞いてあげて下さい。耳を傾けてください。そこには少なからず、あなた達へのお母さんなりのシグナルがあるのです。もっと、もっとささいなことで言葉を掛けてあげて下さい。親子の縁も今生限りのものです。言葉を惜しむことは心を惜しむことと同じです。耳と口と心を精一杯使って支えてあげてください。それはあなた達自身のためでもあるんですよ。死んでからでは遅いのです。はっきり言いますが、お母さんへの思いやりが足りませんね。」

家族のかたちには色々ある。核家族という言葉も言い古された感があるが、年老いた親にとって現代はどのような時代なのだろうかと考えさせられたことである。親とはいつも哀しい存在である。
「老いては子に随え」というが、そこには支え合うといった家族の本質が前提にある。その支え合う精神とは本来無償のものであろう。親は常に子供への遠慮や負い目があるものではなかろうか。親の面倒をみるのは当然の義務であるといった理屈は古今東西通じてはいなかったであろう。理屈が先行するのではない。慈しみや愛といったものが先ずそこにあるということなのだ。

見得ないものを見るようになった母親。それは目の前の家族の愛を真っ直ぐに受け入れられなくなったことの反動ではなかろうか。母親は自分の見たいものを見ている可能性が高い。年の瀬になっての心細さも加わっているようでもある。ご縁がある限り、そんな彼女の話し相手になれればいいと思っている。最初は怪訝な顔をしていた家族であったが、そのうち表情も穏やかになり、私の提案を承知して下さったようである。あとは実践あるのみ。


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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
とても良いお話で、
大変為になりました。
有り難う御座いました。

今年は、お世話になり有り難うございました。
また来る年もどうぞ・・宜しくお願い申し上げます。
たか子
2012/12/30 08:39
ブログ、そしてツイッターを通じたくさんのことを教えていただきました。ありがとうございました。しっかりとした問題意識を持って、ものやことの本質を視たり聴いたりできるようになりたいと思います。来年もまた、よろしくお願いいたします。

2012/12/30 22:36
お坊さんは立派な心理カウンセラーにもなれるのですね。甥とその嫁が離婚の危機になったとき、嫁は母親の菩提寺住職に諭されて素直になれたと語ってくれました。
志村建世
2012/12/30 23:24

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