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zoom RSS 今日の方便・ある蛸獲り漁師の憂鬱

<<   作成日時 : 2013/03/03 03:47   >>

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飯蛸を布施にと置いていかれても 玉宗

先日、輪島のある漁師さんが永福寺に相談にいらした。
60代後半であるその方が言うには、一人乗りの小型船で冬場の蛸漁をしているのだが他の誰よりも漁が少なく、落ち込んでいるという。みんなと同じ道具や餌を使っているのにどうして自分だけが獲れないのか、不思議でならないということだった。獲れる人と比べて十分の一にもならないのだという。漁師仲間には「それはあんたに何か憑いているんだよ。お寺に行ってお払いでもしたらいい」と言われたとのこと。永福寺のお地蔵さんの「お御籤」をみて、お経を挙げてくれという。

実はこの方は昨年も同じ理由で来寺しているのである。三年続きの不漁で、お寺の御利益がないではないかと逆恨みされるのかと一瞬身構えたが、そうでもないらしい。それ以上に少しでも漁が上向くことに切実なのが見てとれる朴訥なおじさんなのである。昨年はご祈祷のあと、多少は漁があったらしく、お礼にと大きな蛸をいただいたものだったが、結果としては仲間内でも最下位だったらしい。その前の年も、そして今年も又そんな不漁が続いているのだという。奥さんにはやんわり厭味を言われるし、息子もアドバイスしてくれるのだが結果がついてこない。不漁続きで晩酌の酒で憂さを晴らしていると淋しく笑うのである。

自然相手のことである。漁不漁は運任せといった要素も大いにあることは御本人もよく承知している。そうかといって無策に漁をしているのでもないらしく、色々知恵を出して試みてはいるのだという。それにしても獲れない。これはやっぱり、なにか自分にいけないものが憑いている所為ではないのかと思いたくなるのも解らないではないし、大漁したいというおじさんの欲望を少しでも叶えてあげたい気持ちは私にもある。さて、どうしたものかと一瞬腕組みしたことである。

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先ずは「お御籤」を引いてみた。「小吉」である。谷の向うに宝あり。無駄骨を休して得るところあり。云々とあった。ん〜、如何にも意味あり気、深いようでいい加減でもある。「お御籤」もまたある程度は統計学の代物である。なんとでも解釈できるといったところがあるのは已むを得ない。大事なことはお払いも御祈祷もお御籤も、わが生きる力へと変換させる機縁と戴くことではなかろうか。するべきこと、してはならないことが人生にはあるし、してもしなくてもどうにかなることもあるし、どうにもならないこともある。精一杯生きても報われないといったことは類を挙げるまでもなく日常茶飯事である。一切皆苦が存在の前提条件である。それにしてももう少し、もう少し、なんとかしたい、というのが欲望に弱い人間の常套手段である。私はそれを笑うつもりは毛頭ない。毛頭ないが、諸手を挙げて己れひとりの欲望を満たすことを良しとは言い切れないのである。ものごとの結果というものも又、人間の計りを越えた時間、スケールで捉えなければならないのが現実であろう。


私の御祈祷は「無い物ねだり」ではない。際限のない欲望の充足のための手段ではない。あってもなくてもなんともない、ものたりないながらもなんともない、ほどほどにして究極の自己満足、自己安心。それこそが仏道の御利益であると肝に銘じているつもりだ。私のしていることは、欲望に左右されない自己の大いなるいのちを戴き、施すことを目の当たりに授記することでなければならない。精進しながらも窮すれば通じ、精進すればこそ無私にして天に即すものと信じている。
というようなことをおじさんには噛み砕いて話したつもりであったが、最後は笑顔で帰って行かれた。さて、どうなることやら。仏を頼って来られたおじさんに私ができることは、ひたすら大漁と海上安全、心願成就を祈るばかりなのである。
蛸漁漁師の憂鬱もなんだが、そんなこんなで人間の欲望充足の面倒さ加減を目の当たりにして、私の方もいささか憂鬱になった次第である。

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「花ミモザ」

花ミモザ光り遮るものもなし

ミモザ咲く眩しき別れなりにけり

花ミモザ明日あることの憂ひあり

木の芽より一歩踏み出し空ひろがる

白雲の匕首を秘め卒業す

ずぶ濡れの卒業生でありにけり

沖遠くうごめく潮卒業す

海の子の沖よく晴れて卒業す

月の色した落第の子を遠く見る

老いてなほふつゝかなりし春の夢

訣れには何かが足らぬつくしんぼ




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内 容 ニックネーム/日時
車のナンバーは妻が決めました。「7373」です。なみなみ〜いつも充足されていたいという妻の願いです。最近妻の言葉に、妻を見直しました。「あってもいいし、なくてもいいの。なくても満足なの。いつだって なみなみ よ。」こんな妻に不満を持つなんて…。

2013/03/03 16:16

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