再生への旅

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zoom RSS 父と酒と、人生と

<<   作成日時 : 2013/10/29 05:19   >>

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木漏れ日に浮かび出でたる秋の蝶 玉宗

私は晩酌というものをしない。お酒は飲めるが呑まなくても生きて行ける人間だと思っていた。思うようにしていたというのが真相に近いかもしれない。

出家しても般若湯とか云って飲酒の機会はないことはない。雲水の頃は一升瓶を開けたこともあるらしい。本人は記憶にないのだが廻りの者がそう証言するので否定しようもない。
住職になってから先代住職がお酒を呑まない人だったこともあり、自坊では「晩酌」という言葉が死語になっていた。夫人などに「偶にお酒が飲みたいなあ」などと戯れに云ってみると「信じられない?!」みたいな顔をする。

法事で御馳走になることもあるのだが、檀家の少ないお寺での事、年に数えるほどの飲酒である。私自身もなければないで済ますことが出来る。酒煙草、賭けごとに浪費したくないといった貧乏根性が私にはある。勿論、お寺の住職という体面もある。そしてまたそれ以上に、お酒に対するトラウマのようなものがある。それは実の父の酒が齎した家族の不幸と関係しているようだ。そう思いこんできた。

漁師であった父は小さいころからお酒を呑んでいたらしく、ご飯に焼酎をかけて食べようとして親にしこたま叱られたそうである。俄かに信じられないが、死ぬまで焼酎一本やりだった。烏賊釣り漁へ出掛ける夕方になると、二キロばかり離れた酒屋に酒を買いに行かせられたものである。4合瓶というのがあって、それを持って沖へ出るのである。飲酒運転ならぬ飲酒漁である。

酒癖が悪いといった父ではなかった。少なくとも子供の前では優しい父なのである。呑まない時はなおさら口数も少なく、馬鹿正直な、欲の少ない人間だった。酒好きではあるが仕事に対しては真面目で、どちらかと言えば名人気質であろう。漁に関しては仲間に一目置かれていたのである。

元気なうちはそれでもよかったのだが、年老いて思うように漁もできなくなると、それは酒の所為だと母になじられるようになった。夫婦喧嘩に耳を塞いで眠った日も少なくなかったのである。大好きな父と母が争うのを目の当たりにするのは子供ながらにショックだったし、辛いものがあった。「おれは大人になったら絶対酒は飲まんぞ・・」そんなことを胸に刻み込んでいたものである。
そんな父母もなくなって二十年以上になろうとしてる。この歳になって、なにかにつけて亡き父母に似ている自分に気付くのである。顔かたち、仕草は勿論の事、口癖、性格までも父や母を思い出させるようになった。

さて、その酒であるが、父が酒を飲みたかった訳がおぼろげながら解るような気がしてきた。飲んだときの楽しさも勿論あるだろうが、飲まずにいられない父の心理が解るような気がする。もっと云えば解ってやりたい自分がいる。子供は親が育てたようにしか育たないというが、父の生き様と私自身の半生を重ね合わせて、その心理が妙に臍に落ちるのである。

まあ、要するに、父も淋しかったのだろうと。

まるで酒を飲むための言い訳を探しているかの如きであるが、ここだけの話、これからは夫人に隠れてでも少し飲酒をしようかと思っている。勿論、破戒にならない程度だが。



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「はればれと」

はればれと空に懸かれるくわりんの実

天高く木偶の坊とぞ呼ばれけり

くろがねの光りをまとひ露烏

どうしやうきちきちばつた日が暮るゝ

秋ひとり連れて歩きぬ夕日影

あてのなき明日がたよりでうそ寒し

生きながらいのち枯れゆくいぼむしり

ゑのころや夕日止むるすべもなし

秋声やいのちに音叉らしきもの

奥能登の土の香りや零余子飯






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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
 いい文章ですね。静かな感動があります。私も酒の好きだった父の気持ちを推し量ることが多いです。親孝行したい時に親はなしといいますが、もっと父と人生のあれこれについて話をききたかったなあと思います。まあ亡くなったからこそ、そんな気持ちがわいてくるのでしょうが・・
屋形船
2013/10/29 08:42
年を取ると親に似てくるとはよく聞きますが、
確かにそのようですね。
私、自覚はあまりないのですが人様から良く言われます。
「お父さんとよお似てきはりましたなぁ」と。
喜ぶべきか、、いえ、戸惑いの方がおおきいのです。
え〜っ、全然性格違うのだけどお、と自分では思うわけで。(^^;
そんな父は毎晩欠かさず98歳まで晩酌をしていました。
多くはないがきっちり定量を。
私は、たまにしか飲まない。
いや、呑めない。(^^;
でも、一度玉宗さんと飲んでみたいですね。
少しだけ。(^^;
愚石
2013/10/29 09:35
屋形船さま。
もっと父を解ってやればよかったと思うことが多いです。父という存在は偉大にして哀れなものでもあります。

愚石様。
98歳まで晩酌ですか。ん〜、殆ど仙人ですね。私には望むべくもない理想郷ですな。幸せな家族の様子が窺われますよ。お大事に。合掌。
市堀
2013/10/30 20:46

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