再生への旅

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zoom RSS 兄の思い出

<<   作成日時 : 2014/03/26 21:26   >>

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草餅や形見のごとき次男坊 玉宗

私には能登半島地震の翌年に仕事先の現場の事故で亡くなった二つ違いの兄がいた。復興勧進托鉢をしていた大阪でその一報を聞いた。もう今年で七回忌になる。

北海道の漁師町に生まれ育った六人兄弟の長男であるが、他の四人は三人の姉と妹。男は私と兄のふたりだけ。小さいころから頼りがいのある存在だった。林檎の木箱でベットを作ってくれたし、裏山のアジトを作ってくれたのも兄である。学校の成績は余り良くはなかったが、バスケット部の主将を務めるなど体育系は優れていた。正義感もあって喧嘩にも強かったようである。同級生でもある公認の恋人と付き合っていた。そんな兄のお蔭で弟は中学校でも高校でもいじめられることがなかった。
父と母は出稼ぎで冬から春にかけて留守にすることがあった。既に家を出ていた三人の年の離れた姉たち。私と妹は兄と共に父の知人の家に預けられ世話になったりした。父や母のいないことのさびしさがなかったのも親代わりのような兄の存在があったからだろう。

私は兄という先を行く存在に一目も二目も置いていたのである。

そんな兄も紆余曲折はあったが最後は家業である漁師を継ぐことなく町を出ていった。兄が家を出たがる気持ちも分からないではなかった。兄は兄なりにやりたいことがあったのだろう。父も母も疾うにあきらめている風だった。ものの豊かさを第一とする時代の風潮は片田舎にも及んでいたのである。
残された次男坊である私は頭から漁師になる考えもない。故郷も漁師も嫌いなのではなかったが、自分が漁師で生きていかなければならない必然性がなかった。生きていく術が想像できなかった。要するに親の苦労も知らず迂闊に生きていたのである。

その後両親は国家公務員になった私の傍でひととき生きていくことになるのだが、出家してしまうとは予想だにしていなかったであろう。兄は函館で生涯の仕事につき、所帯を持ち、二人の子供にも恵まれた。盆暮れには帰省していたようではあるが、どんな気持ちで故郷を行き来していたものか、今では確認しようもない。思えば親不孝な兄弟ではある。

そんな兄から亡くなる一ヶ月ほど前に久しぶりに電話がかかって来た。それは既に亡くなっている両親のお墓についての話だった。兄は家業を継がなかったが実家の名前は継いでいる。本来なら長子として供養していくべきであるが、あろうことかずっと嫁ぎ先の姉に面倒を見て貰っていたのである。私も迂闊ではあったが、今になってどうしたものかと悩み始めていたのである。私は出来ることなら骨を引き取って兄が供養していくべきだと忠告した。そして、会話の最後にひとこと余計なことを口走ってしまった。

「ちゃんと実家のお墓を守らないと罰が当たるぞ」

兄も私もいつものように笑って電話を切った。
それからひと月後の事故死である。なんて馬鹿なことを言ってしまったんだろうと悔やんだことである。兄のことを言えた義理ではないのだ。長子がお墓の面倒をみなければならない、などと私は本気で思ってはいなかった。気心の置けない兄なればこその一言だった。

通夜に駆け付け棺の中の兄を覗いた。久しぶりに対面したその顔は穏やかだった。弟に優しかった変わらない兄の顔がそこには眠っていた。親の縁のもとに今生を共に生きた兄。同胞とは言ったものだ。そこには仄暗いながらも確かに血脈の潤いがあった。切なさがあった。

すでに兄の寿命より五年も長生きしている私であるが、故郷を出て生きている流浪の思いは生涯消えることがないのかもしれない。


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「花の意」

花の意の解りやすくてクロッカス

ひとつづつ一輪草のなだれ咲き

白梅の芥の如き花咲いて

葉山葵やどこかに水の過ぐる音

牡丹の臍の緒ほどの芽となりぬ

雪割草ゆくへの知れぬ風が吹く

パンジーのひらめいてゐる日の光り

フリージア花のきざはし差し出しぬ

まなうらに残るまぶしさ福寿草

菠薐草けふあることの危ふさに


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「春の雨」

との曇る空より漏るゝ春の雨

井戸端の桶に溢るゝ菜種梅雨

春暁に打ち寄せられし夢枕

囀りを茶箪笥に閉じ込めぬかと

春星やいづこの馬の骨ならむ

いつまでも臍を曲げずに桜餅

菜の花にきれいな恋をする日かな

朧夜の柱時計を叱りけり

母がりの姉に恋せし春ショール

妻がゐる春の夢より覚めてなほ





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