再生への旅

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zoom RSS ある小さな家族葬

<<   作成日時 : 2014/04/09 05:30   >>

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春ひとり花束担ぎゆく男 玉宗

離婚した妻のお腹には胎児が宿っていた。

実家に戻り臨月を迎えた。帝王切開で出産したが、術後の経過がかんばしくなく、生後一ヶ月で赤ちゃんは夭折した。若い母親は祖母と一緒にお寺を訪ねてきてお弔いをしてくれと言う。母親は憔悴している様だったが、なにもかも初めての事でどうしてよいのか戸惑っている様子が窺えた。離婚、出産、そして子供の死。ひとりであって一人で生きてはいない現実。そして、思い通りにはならない現実に家族の中でも肩身の狭い思いをしているのであろう。

体を清めて枕勤めに伺うと、仏間に敷かれた小さな布団に、枕より嵩の低い、小さな赤ん坊の遺体が横たわっていた。死に水を含ませようと顔を拝むと、そこには小さいながらも、凛々しい顔立ちの男の子が眠っていた。この世の縁の薄さを怨むこともなく、誰を責めるような風でもない、人の世の葛藤も清濁も知らない、なにものにも染まらない、やすらかな命の死がそこにはあった。

私は思わず呟いたのである。

「親孝行な子だね・・・」

母子家庭への偏見だと叱られるかもしれないが、一人遺された若い母親も不憫だが、まるで母の苦労を除くかの如く旅立った子が不憫でならなかった。

<お母さん、一人で自由に生きて行ってね。また新しい出会いの人生があるよ。一度きりの命をしっかり生きて行ってね。>

お経を上げながら、そんな声なき声を聞いていた。

親が離婚し、生後一ヶ月で死んでしまったいのち。その声を別れた父親にも母親にも、遺族にも聞いてほしかった。聞く耳を持たねばならないと強く思った。なぜなら、この子が生まれてきた意義は、欲望の世界に遺された者を目覚めさせるためにあったと言わざるを得ないから。


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「腋」

マナーモードに仏生まれて来る日の

ずぶ濡れの仏に春の夕焼けが

落胤が産み落とさるゝ春の闇

ゴータマは腋より生まれあたたかし

踝は意外に頑固青き踏む

恋をする腋の眩しさ風光る

先生を狸とおもふ虚子忌かな

花よりも貌に疲れてしまひけり

花の屑別れ話しの縺れより

たんぽぽの日ざしを借りてうたゝ寝す

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
個人的なことで恐縮ですが、、、つい先日、28歳の従兄弟を亡くしました。原因はわからないのですが、朝起きてこずにそのまま…でした。心不全としか言いようがなかったようです。
49日が終わり、このことをやっと言葉にできる気がします。

従兄弟は千葉県にいることもあり、最期は家族だけで静かにお見送りをしたいと言われ、顔を見ることもできないお別れでした。

私は31歳ですが、自分より若い死はやりきれなさがあります。ましてや急死…。

小さい時は年に一度、夏休みに愛媛に帰ってきてくれていましたが、中学生になったあたりからなかなか会えず…でした。
昨年、祖父の23回忌のため、15年ぶりに会えましたが、それが最期になってしまいました…。

まだまだ今からやりたいことがたくさんあったと思います。あの世でやりたいことを思いっきりやってもらえたらなと願っています。
しぃ
2014/04/13 19:22
この記事は実に切なくて哀しくて心の琴線が震えました。
彼女の苦しみと諦め、そしてこれからの人生への新たなる決意、あまりにも早く過ぎ去っていった珠玉の小さい命がもたらした母への感謝。
小さいお葬式がもたらした人生の意味。

その昔、成さぬ恋の果てに、ひとり子を産み、育て、もうすぐおばあちゃんになる私の人生ですが、この女性にもいつか母となり幸せになってほしいと切に願います。
NYan
2014/04/23 16:55

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