再生への旅

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<<   作成日時 : 2014/06/15 19:47   >>

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ふるさとの山惜しみなく滴れる 玉宗

実父のことは拙ブログで何度か取り上げている。ここ数年来、父という存在に思いを致すことが多くなったようだ。

道南は噴火湾沿いの南北に長い町で漁師をしていた父。焼酎が好きで、素面の時は口数も少なく、どちらかと言えば控え目で欲も少なかった。本人も言っていたが正直が過ぎて、子供ながらに損な性格のように見えた。働きもので負けず嫌いな母と二人で出稼ぎなどしたりして六人の子供を育てた。長男である兄が家を継がないことがはっきりした頃から病がちになり、晩年は喘息を発病し苦しんでいた。父は当初から次男坊である私に家業を継がせる期待を掛けている風でもなかった。どちらかといえば病弱だった私自身も又、漁師になるという人生の選択肢が当然のようになかった。両親の苦労や幸不幸を目の当たりにしてはいたが、実際のところ人生というものが如何なるものなのか解らないまま迂闊に生きていたのである。

そのような「家」の節目と私自身の独り立ちの脱皮の痛みが重なっていた迷える青春の日々。両親を愛し哀れみ、そして憎みながらも離れられなかった愛憎の日々。私は両親を殺したがっていたのかもしれないと思うこともあった。そんな五里霧中の青春の彷徨の果てに私が選択した出家とは、自分を抹殺することによって愛憎の柵や人生の謎や社会の胡散臭さから逃げる手立てでもあった。それがそのまま父と母から自立する選択でもあったと、今にして思うのである。

なんという親不孝。父と母の無念を痛いほど感じることがある。父や母が叶えることができなかった夢があっただろう。その夢をさえ子供に託すことができなかった父。託そうとしなかった父。晩年は姉夫婦の世話になり他郷の地で人生を全うした。私の出家にも両親は立ち合ってくれたが、小さくなって憚りながら生きているように見えた父と母の姿が目に焼き付いている。二人の目に出家した私はどのように映っていたのだろうか。思いを馳せれば今でも涙が止まらない。

そして、人の子の親となり、同じ仏の道を親子で歩こうとしている今の私。お坊さんになることを倅に強制した覚えはないが、親に言われなくても子供ながらに家のしがらみに悩み、受け入れようともがいていたのには違いない。今もそうかもしれない。然し、非情な物言いではあるが、人生とは竟に選択の日々である。誰でもない、どこまで自己責任の世界を展開する日々のことである。それが好き勝手にこの歳まで生きてきた私の経験則からの一つの答である。

生きている間は支え支えられる関係であることは言うまでもないが、親とても子に代って生きられず、子も又親に代って生きることもできない人生。ともに明日しれぬ諸行無常のいのちを生きている存在。親孝行とはなにか?子孝行とは何か?親は親として自立してこそ、子は子として自立してこその孝行ではないのか。どちらも比べることのできない一期一会のいのちを頂いているのには違いない。

父の無念は確かにあっただろうが、父は父の責任でその無念を呑み込んで生き死んでいっただろう。その潔さ、その寡黙さ、その正直さ、その逞しさはだれにも替えられない私だけの父のものであり、私だけが受けついで生きていくべきものなのである。死んでも尚親は子を育て、支え、手を引いてくれている現実がある。父は永遠に不在であることによって存在が約束されている。父とは可能性の典型として永遠なる存在である。どんな御粗末な親でも、子は永遠に父を乗り越えていかなければならない所以もそこにあるのだと言いたい。


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「飯粒」

紫陽花が顔を洗つて出直せと

父さんと呼ばれて豆の飯を喰ふ

暗きまで月日みごもる実梅かな

これ以上背伸びは出来ず古簾

飯粒を暗がりに踏みさみだるゝ

仄冥き月日どくだみ見て過ごす

ぼうふらが罰のごとくに立ち泳ぎ

花栗の影揺れてゐる昼寝覚

花南瓜蟻が溺れてゐたりけり

本堂に猫上がり来る梅雨出水


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「猟夫」

日盛りを猟夫のごとく伝道師

足元の覚束なくて医者いらず

ステテコの父がそこらをただよへる

手すさびにどくだみを抜く夕餉前

上蔟や山越えて来る星の数

宵はさながら文読むごとし月見草

同胞の手向けに里の姫女苑

鴫足草だけに吹く風あるらしく

雨ながら光りを点し金糸梅

雲なして溢れ咲きたる栗の花

谷空木かつて犬死せし辺り

蜂が来てほたるぶくろを覗き込む



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「風の音」

父といふ不在を祝ふ日なりけり

夏座敷風が素通りしてゆきぬ

合歓咲いて風を宥めてゐたりけり

佳き風を探し風鈴持ち歩く

草笛の父が疾走したがりぬ

飾られて淋しき貌や祭馬

髪洗ひ打ち寄せられしごとくをり

馬冷やす能登の荒塩舐めさせて

をとゝひがきのふのやうに昼寝覚

端居して形見ごとくをりにけり

抱かされて半歩引きたる薔薇の花















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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
おはよう御座います。

珠玉の33句に感銘いたしました。
特に・・

佳き風を探し風鈴持ち歩く

良寛様みたいで・・投稿文と合わせ読み返すと
鼻の奥がつん!として涙目になりました。

たか子
2014/06/16 07:34

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