再生への旅

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zoom RSS 今日の百尺竿頭・寝相あれこれ

<<   作成日時 : 2014/07/23 21:38   >>

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仏弟子の寝言歯軋り青葉木菟 玉宗


今から30年以上も前の話であるが、雲水になって初めて安居した愛媛瑞応寺僧堂で教わったことの一つに眠る作法がある。それはどんな眠り方かといえば、本尊に足を向けて寝ないこと、裸で寝ないこと、黙って眠ること、妄想しないこと、そして右脇を下にして、横向きに眠るのである。右脇を下にすると当然心臓が上にくる訳で、それがなんか、心臓への負担を少なくするらしい。そして、未だ覚らぬわが身を顧みながらも、余念なくひたすら眠るのである。

姿形的には、お釈迦さまの涅槃のお姿・頭北面西に倣っているのかもしれない。今でもどこかで北枕で右脇を下に、顔を西に向けて毎夜板敷きの床について眠るお坊さんがいると実しやかに教えられたものだ。冷やかしているのではない。それほどまでに身も心も古法に習って生きておられるお坊さんがいることに尊崇の念を禁じ得ない。

これらの作法は戒というものではなく、律の範疇に属するのではないか。言ってみれば自己律というようなものだろう。実際僧堂では寝相を点検されることはなかったし、教育的指導を受けることもなかった。実際言われたように寝に就くのだが、朝までこのかたちを崩さぬことなど若かった私には不可能に近かった。どうしても当初は窮屈感が拭い切れず、寝返りはするは、隣りの単に足を投げ出すは、ひどいものである。
因みに、僧堂では一堂に会して就寝する。寝てしまえば、仏弟子とはいえ、素性を疑いたくなるような寝癖ではあった。歯ぎしり、うわごと、夢遊病者のごときもの、様々であであり、その人間臭さが面白かった。ああ、生身の人間が修行しているのだな、と覚ったものだ。だから尊いのだとも。

さて、還暦を間近に控えているメタボには仰向けやうつ伏せで眠ることの方が苦行となっている。いつの頃からか、右脇を下に横を向き、頭を仏さんの居られるであろう方へ向けて寝に就く癖がついてしまった。自慢ではないが、何処に泊まっても本尊へ足を向けて眠ることが出来なくなった。

余談だが、わが夫人はうつ伏せで眠ることが多いようだ。私は自分の寝顔を見たことがないのだが、夫人の寝相や寝顔を間近に拝見したときの感動と落胆を未だに忘れられないでいる。見様によって人の寝顔は無防備で間抜けであるが、明らかに死に顔とは別の次元の尊厳さを漂わせている。

いづれにしても眠ることも修行と言われる禅の世界。寝過ぎてもいけない。寝なさ過ぎてもいけない。それはとりもなおさず、無常迅速の人生の精進が問われていることの一環だということだ。時間に切れ目はない。いのちに切れ目はない。四威儀、行住坐臥に切れ目はない。そこには人生の真相も弁えず、仏法のなんたるかも弁えず、あたら寝てばかりいて無駄に過ごしていいのか、という自問自答がある。明日しれぬいのちを目覚めることなく夢中に過ごして後悔しないのかという後ろめたさがある。

仏道とは、何時とも知れぬいのちの断絶、長逝の眠りに就く作法を習っているようなものなのかもしれない。切れながら繋がっていくいのちの灯。如何に況や今日の眠りをや。



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「晩夏」

海はもう誰のものでもない晩夏

唖蝉の死に物狂ひ胸に当たる

鳩首して典座に鰻喰ふ日かな

愛憎はみなまぼろしの羽抜鶏

炎天を猟夫の如き伝道師

すててこのわれを侮る烏かな

不束な夢もいさゝか籠枕

留守居して茶漬け掻きこむ大暑かな

すぐりの実熊を親父といふ郷の

素足摩れば恥多きわが半生で

冷麦を啜るしがなき夢を見て

叩いては撫で回しては西瓜売

大風に煽ぐ土用の簾かな



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「大暑」

つべこべと大暑の妻の申すには

人生のいきほひ余り虹を見に

さつきから向日葵の目に障りをり

餡蜜や母のやうなる妻とゐて

虫籠に磯蟹入れて戻りけり

捕虫網立て掛けてある安居寺

滝といふ不立文字が目の前に

端居せる妻怖ろしや避けて通る

朝顔や家族といふも今生の

生きてあれば糸瓜咲くさへ懐かしき

日焼けして改宗以後を溌剌と

寝冷え子の草のごときが膝に乗る

ゴキブリに感けて座五を逸しけり

生き死にのいづれひそやか花擬宝珠













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