再生への旅

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zoom RSS 今日の諸行無常・布団のこころ?!

<<   作成日時 : 2014/11/23 21:17   >>

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引つ被る布団の中のむかしかな 玉宗


私は小さい頃からよく風邪をひいたりお腹を痛めたりする、どちらかと言えば虚弱体質であった。
風邪を引くと昔から先ず咽喉の調子が悪くなる。そして節々が痛くなる。若いころは蒲団を被り一晩汗を掻くと症状は軽くなるのが常であったが、還暦を来年に控えてそうもいかなくなってきた。

それでも「汗をかけば風邪は治る」という思い込みが未だに私にはある。どうもそれは母から受けた風邪治療法の影響のような気がする。熱が出た小さな私を母は自分の蒲団に入れて抱いて寝てくれたものだった。
「汗をかけ、汗をかけ」と母はよく言っていた。
夜中にふらふらになった私の、汗びっしょりになった下着を取り替えては、すばやく乾いたものに着替えさせ、水を飲ませたり、缶詰の甘い蜜柑を食べさせてくれた。そしてまた、朝まで母の蒲団で一緒に眠るのである。私の風邪が治って間もなく、母がコンコンと咳をしていることがよくあった。子供ながらに自分の風邪が移ったのではないかと哀しくなったものだ。

お腹が痛いと訴えては母を困らせてもいた。原因が解らず、正露丸や虫降しをよく飲まされた。母自身も飲んでいたらしい。それでも頻りに腹痛を訴えるので、小学生の頃、函館の総合病院へ母が連れて行ってくれたことがある。結果がどのようなものであったか覚えていないが大したことでもなかったのであろう。そんなことより、母と二人で街へ出掛けたのが嬉しかったのを忘れないでいる。初めてデパートの食堂で食事をしたのもその時だったと思う。体質的に私は母に似ているのかもしれない。
又、漆に被れては兄と蒲団を並べて寝ていた記憶がある。兄は私より丈夫で、弟の私ほどには手の掛らない男であったが、父の跡を継ぐこともなく家を出た。そんな二つ違いの兄も数年前に不慮の事故で亡くなり、もう兄より長い人生を送っている。

私は中学・高校となるに及んで体も大きく丈夫になったが、情緒的に不安定になっていった。
公務員に就職が決まり、母は私にスーツを買ってあげるといい、一緒に函館に出掛けた。私より母の方が余程嬉しそうに洋服屋の主人と寸法などの話をしている。私には母の望みに応えることができないだろうという予感があったので、喜々としている母を見ているのが辛かった。三年ほどは両親と一緒に暮らしていたが、ある日突然、私は仕事を辞めてしまう。遅まきながら自立への迷走の始まりだった。丈夫ではあるが思い通りにならない長男や素直ではあるが病弱で精神不安定な次男坊を抱えていた母の心通や苦労を思えば泣けてくる。


蒲団には母の温もり、家の温もりがある。匂いがある。思い出がある。地面や石の上に眠るのとは違った蒲団に眠ることで叶う夢心地がある。
この年になって蒲団を被って眠る癖が私にはある。寒さしのぎと云えばそれまでだが、昔ながらの、母に抱かれていた柔らかくも底しれぬ甘い闇がそこにはある。それは羊水の記憶だろうか。死の匂いだろうか。蒲団の中には母に抱かれて死んでしまいたいという怖いものみたさの心理のようなもの。無防備に生きることができる解放された甘い慄きのようなもの。



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「小春」

長生きの母ゐる小春日和かな

死にたがる母を背負ひぬ小六月

不貞寝してをるにやさしき小春かな

小雪の日向日影や臍曲がる

しづけさに力を抜いて散る木の葉

着膨れて為すこともなく日の暮れて

枯野よりふり返りたる夢路かな

しぐれつゝ生きるほかなしけふもまた

帰り花冷めたる愛のまなざしに

鯛焼の星に湯気なす逢瀬かな

綿虫の飛ぶといふより溺れをり




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「京しぐれ」

比叡より覆ひかぶさるしぐれ雲

雲割つて冬日注げる大湖かな

棹させばしぐれの中や竹生島

洛中の小春を望む古仏かな

蕎麦喰うて京の時雨に打たれけり

落柿舎へ曲がる冬田を二三枚

屈むほどな去来の墓へ散紅葉

月渡る橋に咲きたるしぐれ傘

散り敷ける紅葉の中や詩仙堂

湯豆腐や芝居染みたる京の夜

木枯しも匂ひ立つかに嵐山

しぐるゝや人を喰つたる京ことば

蹲に散り沈まむとするもみぢ

枯野さび芭蕉結びの地なりけり



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「山颪」

大根洗ふ背なに白山やまおろし

千両や今はむかしの武家屋敷

波郷忌のすこぶる旨い酒なりけり

風もまた夜は狂へる葛湯かな

冬木立日差し愈々研ぎ澄まし

銀杏落葉風に旋毛のありにけり

鮟鱇の一物なきを捌きをり

棺桶の中は淋しき寝酒かな

さざんかの見下す花の高さとも

焼芋を抱いて奈落へ消えてゆく

星よりも遠き恋せし鯨かな

鶴鳴くや畑に菜屑捨てるとき






















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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
玉宗さんも母を慕えば赤子のよう。仏さまが、とても近くに来てくれたようですね。これなら誰でも納得します。
志村建世
2014/11/25 23:04

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