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<<   作成日時 : 2017/06/06 04:42   >>

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ふるさとを遠くに生きてゐる素足 玉宗


故郷を出て四十年。母が死んで二十年。父が死んで二十五年。二人とも他郷でお坊さんになって間もない私が引導を渡した。手元にはほとんど二人の生前の写真はないのだが、折に触れて父母のこと、故郷のことを夢に見、思い出す。私にとって親も故郷も断ち切りたい柵でもあり、頼りになる絆でもあった。乗り越えたい壁でもあり、癒される花園でもあった。今でもそうだ。

私は何のためにこの世にうまれてきたのか?私にしかできないことは何なのか?というようなことに若いころから随分と悩み、迷いを重ねてきた。挙句に親と故郷を捨てて出家の道を選び今日まで生きて来た。出家してからもいろんな事があった。綱渡りのような人生といってもいいだろう。

私自身の運勢は弱いのだが、あたわった運命の星が守ってくれていると云われたことがある。時々、大きな力に守られ、救われていると感じることがある。十年まえの能登半島地震に遭ったときもそうだった。あの時も母と父に象徴される原郷の力が私を守ってくれたのだなあと実感したものだ。めぐり合わせ、運命というものを考えさせられた体験ではあった。

できることなら生涯ふるさとで生きていたかったが、その愛憎の果てにお坊さんという生き方を選択した。それはひとつの賭けだった。その道程を顧みると、人生はこうであらねばならないというようなものではなく、日々の出会いや与えられた場の中で、自らが創造しててゆくものだった。悲しいことに親や故郷を捨てて、そのことに気づいたのである。

家族とは、柵というより、癒され、支えられている存在であるのが理想。私が子供の父であり、師匠であり、一家の大黒柱であり、お寺の住職でもあるという、社会的な存在として自立していられる力となっている。翻って、死んだ母や父にとっても私という存在はどうだったのだろうかと思うことがある。

私が私でいられるのは、家族や社会があるからこそ。今の私があるのは母と父をはじめ多くの人に育てられ、教えられ、励まされて、支えられてあるからだということに素直に肯くことができるようにはなった。社会への恩返しと共に家族が路頭に迷わないようにしてやることが今生の残された私のお勤めでもある。

長姉と兄が数年前続いて亡くなり、小さい頃お世話になった八百屋のおじさんも、母の兄も故郷にはいない。残った同胞もみな散り散りである。数年前帰省したとき、母や父や私達が笑い、泣き、夢を見て、絶望した生家は既に跡形もなかった。家族の暮しと切っても切れなかった故郷の海だけが昔のままだったのが切なくもあり、慰めでもあった。

今も私は原郷への甘く、そしてしょっぱい思いを抱えて生きている。



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「ふるさと」

杜鵑追はれしものはふり返り

桑の実を喰ふべ故郷遠くして

ふるさとへ帰る由なき端居かな

愛憎の果てなるここに水を打ち

文才は二束三文守宮鳴く

冷酒や性懲りもなき人生の

寝冷え子が草のごとくに凭れけり

京鹿子女系家族のあかるさの

夏茱萸や同胞はみなちりぢりに

水木咲く峠を三つほど超えて

空に影し花と燻る木通かな

やうやうと日の落ちかゝる余り苗

うすら寒き雨や木天蓼咲くころの

バス停に椅子一つあり夕焼けて

野茨や今もどこかの帰り道

雲の峰悔いあるものは立ち止まり



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「野ざらし」

雨ざらし野ざらし風の茅花かな

垂乳根の窶れじやがたら花盛り

乳呑み子は甘き匂ひや夏の蝶

野ざらしへうち捨てられし昼寝覚

分かり合へる蟻がゐぬかと見てゐたる

ずぶ濡れて油染みたる鵜なりけり

野ざらしの屍幾万雲の峰

舞ひ降りて白鷺影と一つになる

病葉や誰も解けざるパスワード

野ざらしの風に青みし草千里




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「窓開けて」

窓開けて芒種の風を誘ひけり

梅花うつぎ窓を開けたるあかるさの

石蕗の厚き広葉に照る夏日

青梅に触れば尻の冷えありぬ

無花果のまだ智慧足らぬ青さあり

暑き日や死んだやうなる村一つ

ひとり世に思ひ余りて草毟る

韜晦の山ふところや不如帰

ひとつづつ置きたるやうに玉葱は

父帰る毛虫と同じ影曳いて

今ならば父を恕せる冷し酒









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