再生への旅

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zoom RSS 山河大地というお経

<<   作成日時 : 2017/06/21 06:04   >>

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夏花摘むだけの人生とはなりぬ 玉宗


歳時記には多くの季語季題が載せられている。
「山笑う」「山滴る」とか「亀鳴く」「蚯蚓鳴く」「守宮鳴く」とか常識では俄かに受け入れ難い季語がある。俳人とは口から出まかせを言うものだと思われる方もいるのだろうか。「山笑う」は春の山の木の芽や草木の綻び始め、彩り始めた様子の自然観察からの形容であろう。ほんのりと穏やかに、如何にも微笑んでいるといった風情。それは大笑いや哄笑ではない。まして嘲笑でもない。知的風刺、諧謔の要素もあろうが、どこまでも五感を働かせての地理や自然への己を無にした存問なのである。

夏の季語である「守宮鳴く」などの季語も基本的には情緒的な表現であり、詩語であることを忘れたくない。実際には鳴かない守宮や亀や田螺が部屋の隅や池や田圃で蠢いている頃の情緒、といったものがある。それを如何にも俳諧的な季語で以って詠う。季語もそうだだが、「俳諧」には「常識」へのアンチテーゼみたいなところがある。その醍醐味の一つは「いのちのあたらしみ」にあるといってよかろう。そしてそれは「禅」に於いてもまた「分別」を越えるということでは似たような趣きがないことはない。

仏法の話をしよう。
実際のところ「山」は「笑ったり笑わなかったり」するのだろうか?守宮は「鳴いたり、鳴かなかったり」するのだろうか?私に言わせれば「山」が「笑う」と言って一向に差し支えないと思っている。笑いもすれば眠りもする。亀も鳴くし、田螺も鳴く。蚯蚓も守宮も、空も海も雲も水も、山河大地も、石も露柱も、生も死も、鳴いたり笑ったりする。山は笑うだけではない。「諸行無常」という「歩み」さえするのである。「山」は「諸行無常」という「説教」さえするのである。「山」という修行、菩提、涅槃、生死、無情説法がある。世界が一体である様子がある。

様々な諸行無常の声と姿。それを聞きわけ、見分けることは俳人だけの特権ではない。否、それは特権といったものではなく、まぎれもない仏法の様子を語る「経文」である。そのものの様子。自己の面目。すくなくとも私にとってそれは今といういのちの事実を語る掛け替えのない方便、月を差す指であり、夢の中で説く夢の様子といったものである。人はいのちの実相を言うことができるのか。ことばとは何か?それは人のいのちに影日向なす感性そのもである。それは月を差す指ともなり、月を支える手のひらともなり、月を塞げる雲ともなろう。

歳時記にある季語季題、それもまた「経文」であると言って差支えないと私は思っている。情緒的話だけではない。禅では絵に描いた餅でさえ「食べれる」のである。「経文」という「画餅」で腹が膨れるような大力量の鉄漢雲水が期待されている。雲を耕し、月を釣る平常心。そのような「経」に生きる禅の文脈がある。そのような「いのち」の文脈がある。仏道の歩み、進歩退歩がある。風情がある。仏道の生死がある。



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「朝に夕に」

夏萩の風も清しき枝垂れかな

雀らの騒ぎ見てゐる烏の子

朝に夕にひらいてむすび花かぼちゃ

まだ青き柿とも云へぬ実なりけり

一日が始まり終る水打ちぬ

雨ながら灯り点すや金糸梅

背伸びして恋してゐたり花ユツカ

従兄弟なる恥かしきもの立葵

悔やまれてならぬ夏茱萸含むさへ

薔薇咲くも咎められたる心地して

夏燕グランドの空ひとり占め




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「青」

水無月や夢の中まで青ざめて

よく眠る梅や青くも丸々と

雨の日の窓の暗さや柚子青く

無花果の臍の曲がりし青さとも

木漏れ日も水のあかるさ青葡萄

融通の利かぬ青さや柿実る

空もつれなき山の深さや青胡桃

青林檎ほとけの母のお下がりの

栗の実のくりくり坊主影も青く

紫陽花の夢と消えゆく青さなる




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「ふいに」

米櫃の暗がり覗く夏至の妻

夏花摘むだけの人生とはなりぬ

日当たりし米の山より米の虫

蓮の葉に震へ已まざる大雫

引き締まり小ぶりながらも初茄子

蒲の穂や一揆の鬨を挙ぐるかに

噛みしめてふいに泣きたくなる胡瓜

蕗の葉にお強供へし地蔵尊

百日草を一本づつや六地蔵

月下美人食べに来ぬかと誘はるゝ

立葵あの日故郷出でしより

紫陽花が押し寄す夢に魘されて

その奥に花の闇ある杜鵑花かな

暮れてゆくものの匂ひや韮の花

花栗のいよいよ煙る雨催ひ

かなぶんのぶち当たりたる夜の窓









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