再生への旅

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zoom RSS 食いしん坊さん!

<<   作成日時 : 2017/07/24 05:46   >>

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蜘蛛の糸餓ゑのしづけさ漲れる 玉宗


お盆の頃になると「食」といったことに思いを致すことが多くなる。世に食欲の秋と言われているが、お盆のころの「食」とは「家族の食」といった代物のことである。仏様へのお供えに心を砕いていた母の姿が目に焼き付いている。それはそのまま常日頃の家族への心使いでもあっただろう。お盆の頃ともなると、そこに先祖への思い、感謝の念が強く意識されたことだろう。家族という一期一会の出会い。そんな家族の食の思い出。

 私はどちらかと言えば「食いしん坊」と呼ばれて育ってきた田舎者である。半農半漁の家に育ち、ひもじい思いをしたと言う記憶がない。内容はともかく、その辺は家族の暮らしを支えるのに苦労を厭わなかった両親の真心の賜であろう。働く姿は勿論の事、自分の食べる分まで子に分け与える両親の苦労や思い遣りに思いが至る。
 
記憶に残る小さいころの食事と言えば、海や山で採ったり作ったものが多かった。昆布、烏賊などの海のもの。じゃが芋、南瓜、玉蜀黍など山のものは主食に近い食材であった。自然からの戴きものといった感じ。漁師であった父と、畑仕事に精を出していた母。両親の供してくれる食材を食べるのが子供にとっては当たり前すぎる程のことだったに違いない。比べなければ、どんな親の料理も子供には御馳走である。分別がつき、都会的生活と云った風潮を目にするようになり、不平不満や偏りを持つようになったのだろう。

それはともかく、六人兄弟の中では一番の食いしん坊であったには違いなく、長ずるに及んで「馬力がある」「溜まることはないだろうが、喰うには困らない」「お前は空気を食べても生きて行ける」といった私への評価を何度となく耳にしてきた。生きることの逞しさ、みたいなものがあるのだろうか。半生を顧みて、確かに転んでも只では起きないといった感がないこともない。それもこれも、両親の愛情から授かった生きる力なのかもしれない。
 
繊細なのか鈍いのか、図々しいのか馬鹿なのか、われながら解らないところがある。そうではあるが、一方で「人間、一生の食べる分は生まれたときに決まっている」といった運命論的な見解も真に受けている。六十一年、馬力任せに生きてきて、あっちにぶつかりこっちでひっくり返るような人生。さすがに昨今は身心内外の諸行無常を目の当たりにする日々で、メインテナンス、手入れ、軌道修正、微調整、ランディングの準備をしなければならんことに気付かされている。仏道は欲望に振り回されない生き方を志向するもの。いつまでも食いしん坊万歳と浮かれてばかりもいられない。






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「草の丈」

猛々しき草の丈にも夏深み

なまぬるき湯が沸くやうに草いきれ

宙に浮く待宵草の花明かり

夏燕使ひ切れざる空と海と

夏芭蕉青々と風よみがへる

天井の染み見てゐたる暑さかな

人生に見放されたる裸とも

どこへもゆかぬ母の手になる冷素麺

古簾生きながらへて恥多し

俳諧は殆どやくざ籔枯らし

蝮捕りどこか世離れしてゐたる

死が見えてしまへり蝉の迷走す

雫して線香花火煮ゆる音

星空を舞ひ降りて来し夏布団

遠ざかる星見えてゐて涼しさよ




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「剥き出し」

剥き出しのトマト真っ赤に熟れゐたり

風にやゝ遅れて蓮のゆらめきぬ

向日葵の周りは廃墟かもしれず

梅雨茸食へぬながらも美しき

暇さうだからと瓜番を任せられ

海の家裏も表もなかりけり

プールより響く騒めき空にあり

先立てゝ風にふくらむ捕虫網

暑気中り草の如きに萎えゐたり

喜んでくれるならと割る西瓜かな

水鉄砲撃たれてすぐに仲良しに

めくるめく昭和遥かに浮いて來る

虫送る藁舟夜の波に消ゆ

剥き出しの夜は涼しき肌かな




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「顔」

朝顔や叶はぬ夢のまた始まる

妻といふ天の岩戸や大暑なる

蜘蛛の糸餓ゑのしづけさ漲れる

蝉の声聞くといふより浴びるなり

凌霄花炎をなして咲き継げり

昼顔の聞きしは誰がため息ぞ

ぱらぱらと紙魚が飛び出す般若経

踝に晩夏の波が来て洗ふ

梔子の花の香りと触れ合へる

夕顔や幸せだつたことにして

而して夜の秋とはなりにけり






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