再生への旅

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zoom RSS 絶望という名の執着・再考

<<   作成日時 : 2018/07/05 04:58   >>

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雨に伏す草のおもひや半夏生 玉宗


NHK朝ドラ「半分青い」を時々見ることがある。
昨日は漫画家をあきらめた主人公が、祖父に電話をするという場面。中村雅俊演じる祖父の一言が結構ジンと来た。それは敗戦の折に戦地に取り残され洞窟に隠れていたときの感慨である。外へ出ることもできず、真っ暗な洞窟の中で、日に一度だけ十五分ほど陽が差し込むことがあり、彼は絶望と恐怖の中でも、そのたった十五分の陽ざしに出会える喜びを知り、その為だけに生き延びることができた、ようなことを語っていた。


現在日本では毎年三万人以上の自殺者がいるという。生きることに絶望した者に絶望が執着であるとは聞き捨てならないと怒られるかもしれない。この世に夢も希望もないものに何の執着があるというのか、という訳だ。
しかし正確に言えば自死は絶望という自己への執着の結果ではなかろうか。そして、死そのものは生と同様のひとつの事実ある。それは本来的に私の執着を離れているものだ。執着を離れているものを執着するのはどうなんだろう、という思いがある。私は私の「死」に絶望することはできない。「絶望」はどこまでも生きている私の様子である。

私には私の世界という有難くも厄介なものがある。絶望はそのような私の世界の観念の行き詰まりであり、それは余りにも私的なもの、つまり良くも悪くも本来的に身勝手なもののようだ。思えば、執着の対象は観念の世界に纏わり着き易い。食べて生きていくという事実には「絶望」という観念をも寄せ付けぬ、有無を言わせぬところがある。私が絶望もまた執着であるというとき、それは私の思いではにっちもさっちも行かなくなったときを言うのである。執着からは何も生まれない。行き詰まるだけだろう。

私がいてもいなくても、なんともない、あるがままの世界は、自己へのこだわり、観念への執着を捨てた彼岸にあるようだ。私がいくら絶望しても、或いはいくら切望しても、世界はなるようにしかならないし、なってもならなくってもそれは世界にとって些細とも言えないほど、大したことではない。大した事でないことは私にとってそんなに不都合なことではない。私という小さな存在は世界と一体であるからこそ思い通りにならないのだろう。少しくらい思い通りにならないことは生きて行く必要条件なのだと腹を決めて行くしかない。

私は真相を知りたがったり、知りたくなかったり、面倒なものだが、それがまた私の愚かさたる所以であるか。しかし真相を受け入れるまっさらなものの見方が求められていることに変わりはない。煩悩の向こうにある拘りのない世界、生き方、ものの見方感じ方が私の本当の姿、生きる力なのかもしれない。

人は行き詰まったとところからしか引き返すことはでいないし、転んだり躓いたとこからしか立ち上がり歩き出すことは出来ない。そこにしか踏ん張りどころがないのだ。そのような当たり前すぎることを忘れる癖がいつの間にかついてしまう。避けるべきは「絶望」という「執着」である。

生かされている存在である私の、本当の自己責任の在りどころ、自己再生の脚下とは那辺にあるのか。

正岡子規が言っている。

「どんな時でも死ねる、それが悟りだと思っていたが、そうではなかった。どんな時でも生きていける、それが本当の悟りなのだ。」

宿痾に臥して短い生涯を送った快男子・正岡子規の言葉である。どのような境涯にあっても生きて行ける柔軟で強かな身心を持っていたいものだ。





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「何事」

九谷なる加賀の風鈴貰ひけり

何事と思へばただの扇子なり

団扇もてこっちに来いと招くなり

死後のことさらりと蚊帳の夜話の

煙草火の焦げ跡一つ綾筵

藺座布団暇を潰しに来たといふ

釣忍宵の口なる声通る

蚊遣火や夕餉済ませてやることなし

寝苦しき夜を伴にす竹婦人

夏蒲団亡骸被ふかろさとも



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「虫螻蛄」

雲母虫三蔵法師伝来の

蚤虱里に新馬鈴薯出るころの

蠛蠓に梲あがらぬ日なりけり

背筋這ふ音して蜈蚣来たりけり

負けてばかりの父や化生の蜘蛛哀れ

蝸牛アリバイのなほ続きをり

白銀の泪の跡やなめくぢり

ががんぼの慌てふためく足縺れ

犬掻きはできぬが虫螻蛄泳ぎなら

逸れたる蟻とも逃げし蟻かとも

あな悔し一匹の蚊に寝そびれて

蚯蚓打てば祭りの如くのたうちぬ

月影の縁の下にて蟻地獄








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