坐相が悪い禅師様が考案した窮余の一策

画像


庵なす枕の下は虫時雨 玉宗

御誕生寺便りが送られてきた。いつもと様子が違い裏表に記事が載っている。号外ではなく論外となっている。(なんのこっちゃ}癌を抱えながら、若い修行僧らとともに生活している八十三歳の老僧の肉声と姿勢!をご紹介する。



「頭頂香」 
私は若いころから姿勢が悪い。少々猫背かげんで、首が前に出る。これをなおそうと、いろいろ努力してみた。うまくいかない。これも母親ゆずりの体形として、姿勢のわるいのも遺伝子のせいにしていた。
 特に坐禅中の姿勢がわるい。現在は毎朝二坐(一回は四〇分)、夜二坐の坐禅を続けている。その坐相は腰くだけで、背骨がまるくなり、アゴが前に出る。まともな坐禅の姿勢ではない。
しかも、坐禅中しばしばいねむりをする。姿勢が悪いせいか、坐禅中いろいろな雑念・妄想が、つぎからつぎに出て止まることがない。

坐禅中、警策という樫の棒を持って、修行僧の姿勢をなおしたり、いねむりしている者の肩をピシッ、ピシッとたたく役目の僧が巡回している。
私の姿勢をなおし、いねむりしていたら思い切りたたいてくれと、何回も懇願している。しかし、この老僧だけには注意をしてくれない。そればかりか、いねむり坐禅している姿を写真にとり、それを見せてくれる茶目っけな僧もいる。
仙台で、学生のころから坐禅をはじめて、すでに60年になろうとしている。こんな程度の坊主にしかなれなかったのかと、なかばあきらめていた。

画像


ところが、最近、いいことを思いついた。坐禅中、頭の上に小さな座蒲団を置いて坐ることにした。
効果テキメンである。いねむりすると、頭が前に傾くために小座蒲団が前にすべり落ちてくる。甚だしいときには、一坐に十回も落ちてくる。特に朝の二坐目の坐禅中が甚だしいことがわかった。

しかも頭の上に小座蒲団を置いてから、自分でもわかるように坐禅中の姿勢がよくなった。背骨の最下部にある尾尾骶骨から、頭の頂上まで、ピシッとまっすぐ直結している感じになる。腰のすわりもきまり、丹田呼吸(腹式呼吸)が自然にされてくる。身心ともに好調である。

画像


この頭上の小座蒲団は、山形市の井筒屋法衣店のおばちゃんと電話連絡しながら、いろいろ試作してもらった。最近、小座蒲団の中に綿のかわりに、抹香をタップリ入れてもらった。坐禅中、お香のかおりをかぎつつ坐禅できる。頭上に適当な重量を感じ精神がおちつく。坐禅中の妄想も、いくぶん少なくなった気がする。

そればかりか、坐禅が終って、廊下を歩いている時も頭上に関心がゆき、背筋が伸びて、歩く姿勢も少々良くなりつつある気がしている。
はじめは「頭頂蒲・とうちょうふ」と自称していたが、現在は「頭頂香・とうちょうこう」とすることにした。>

以上が全文である。

画像



確かに禅師様は初めて私がお会いした頃から、大乗寺時代も、坐相が独特であった。そして、居眠りしている。ご本人は目を瞑っているだけで眠ってはいないと云うのだが、眉唾ものである。私も警策当番のときなど、何度も叩いてしまいたい!衝動に駆られたものだ。

それにしても、今になって坐相矯正の為に「頭頂香」なるものを考案するなんて!あり得ない!こんな禅師さまって、空前絶後・前代未聞ではなかろうか!思わず目頭が熱くなる感動すら覚える。

禅師様は次のようにも仰っておられる。

「これまで八十三年以上もお世話になった、この世の中に対する最後の報恩行のつもりで、若い修行僧に扶けられつつがんばりたい」

隠すべきもののない修行の要諦を言って聞かせ、して見せる。「行」は「公」なるものである。私するものではないという確たる信念が禅師様の御境涯にはおありになるのだろう。仏道は身を以ってする以外の何ものでもないことを自らが先導となって証明されている。




よい記事と思われましたらポチっとお願い致します。合掌
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 禅・坐禅へ

にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人間・いのちへ


この記事へのコメント

yoshiyoshi
2010年08月27日 05:27
お坊さんは面白いでんなぁ
釈迦も笑うてござりましょ

門付けの僧秋を連れて来る  よし

みどり
2010年08月27日 07:41
 なんという可愛いお坊様でしょう。
そうして飾りのない潔さ、徳の深さに打たれ心がほのぼのと温かくなりました。
幾つになっても自分を正せるのだと信じます。
私は今までは姿勢が良いと言われていたのですが、今のところ体を庇い軸が前向き加減になっているのですが、姿勢良く暮らす努力をしようと思います。
 ありがとうございました。  合掌
ルフレママ
2010年08月27日 17:40
こんにちは。
板橋禅師様、お元気そうで前向きの生き方、、で姿勢もよろしくなりまだまだ 活躍なされそうで安心しました。
私も家系が猫背が多いみたいで、ならないようにと思っています。明日からミニ座布団を頭に置こうかと、、トライ!!
いらくさ
2010年08月28日 10:06
なんともチャーミングな八十三歳ですね。
私もラベンダーと綿を入れた
小さい座布団を作って使っています。
携帯電話を充電するとき載せるんです。

今夜こそ失敬したいということですか?
ではなくて
風船葛のほうから今夜こそ
月の供物になりたいと私に言ったのです(笑)

近くに空き地があって
とても広いのです。
金網を越えて歩道にはみ出している草を
時々摘んできます。

今日は映画「インセプション」から
インセプションという言葉を
借りてきましたが

この地球は
宇宙の果ての誰かに
見られ続けている
長々しい夢かもしれなくて・・・・・

たわいもない妄想ですから
笑って許して下さいね。

花てぼ
2010年08月28日 10:10
昨日、「徒然草」のこと書きましたが、20年前に一度「読む会」みたいなことをやっていて、今また同じ本を使っていますが、忘れてしまっています。
板橋禅師様のこのお話、兼好法師が話にして「徒然草」に挿入しそうな逸話ですね。
市堀
2010年08月28日 20:21
 よしさま。
コメントありがとうございます。
ご本人はいたって真面目なのです。そこが怖い!(笑)

 みどりさま。
コメントありがとうございます。
仰る様にお徳の高いお方なのです。
多くの老若男女が慕って来られます。どのような人でも包んでくれるような懐の大きさがおありの禅師さまです。

 ルフレママさま。
コメントありがとうございます。
金沢に縁の深いことは御承知の通りです。
私はこの残暑に堪える為、頭に氷を載せています。ほんとです。(笑)


 いらくささま。
コメントありがとうございます。
妄想でしたか。まあ、私も妄想でしたが。(笑)

インセプション、話題の映画のようですね。
いつも映画館でご覧になるのですか?
私、映画館と云うものに数えるほどしか入ったことがありません。それもお坊さんになる前の話です。

いらくささまの想像力についてゆくように頑張ります。何を頑張るのと聞かれると困るのですが・・・


 花てぼさま。
コメントありがとうございます。
そう言えば逸話の多い禅師さまかもしれませんね。
とても、お話し好きなのです。
お会いする機会があればいいですね。
今でも全国各地へ公園やご法話に出掛けられるのですよ。  合掌

2020年07月19日 19:40
板橋興宗禅師ご遷化の報を聞き真っ先に思い出したのがこの記事でした。
近所で開かれている坐禅会に通い始めた頃で、83歳の偉いお坊さんでも初心を忘れずにこれほどにいろいろ工夫されるのかと感動した記憶があります。
10年以上、週1回坐禅会に通い続けておりますが、坐禅にハマるきっかけとなった一つがこの記事だったと思います。
どこかの記事で板橋興宗禅師が「力をぬくようにしてから、坐禅が好きになった」とおっしゃっているのを見た気がしますが、その言葉も強く印象に残っております。
画像がリンク切れしてましたが、記事がそのまま残っていたので懐かしく拝読させていただきました。ありがとうございました。

能登のお寺
2020年07月23日 20:39

>のぐちさん
>
>板橋興宗禅師ご遷化の報を聞き真っ先に思い出したのがこの記事でした。
>近所で開かれている坐禅会に通い始めた頃で、83歳の偉いお坊さんでも初心を忘れずにこれほどにいろいろ工夫されるのかと感動した記憶があります。
>10年以上、週1回坐禅会に通い続けておりますが、坐禅にハマるきっかけとなった一つがこの記事だったと思います。
>どこかの記事で板橋興宗禅師が「力をぬくようにしてから、坐禅が好きになった」とおっしゃっているのを見た気がしますが、その言葉も強く印象に残っております。
>画像がリンク切れしてましたが、記事がそのまま残っていたので懐かしく拝読させていただきました。ありがとうございました。
>
>ご精進のほど敬服申し上げます。
禅師が亡くなられて二週間を過ぎました。自己の灯明を掲げて生きることの一大事を教えてくださった方でした。また、大切な人を失い、空しさが抜けそうにありません。お大事にお過ごしください。コメントありがとうございます。合掌。

この記事へのトラックバック