木枯し1号

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木枯し太郎卒塔婆傾げて来たりけり 玉宗


当ブログでもお馴染みの「てらやまへメールhttp://terayamahe.seesaa.net/」の作品を又ご紹介する。詩を説明するのは野暮なことであるが、ここには作者が敬愛する寺山修司でもなく、宮沢賢治でもない、作者独自の詩的世界があると思う。例によって市堀の稚拙な観念先行型感性の、独りよがり的鑑賞であることをお断りしておく。

「木枯らし1号」

人生は
プロローグ
永遠の眠りが
本編

私は
前座で
白骨が
主人公

このとっぷりした
肉のために
冬色のコートを引っ掛けて
エコバックを下げて
木枯らし1号の吹く街へ
出かけていく

人間という大根役者
やたらと饒舌で
色々な国の
色々な言葉で
色々な台詞を回しては

食べ物の
一つ一つに
綺麗な名前をつけて
毎日毎日
くちゃくちゃ噛んでは
壊している

私の手の中に
美しいマコロンを載せるため

私はきっと
美しい白骨になって
永遠に沈黙するから
今は少し
この風の中に
前傾して
?マークみたいに
出て行きたいから

冬色の絵の具のように
私を
押し出してよ

木枯らし1号が
ブラシを揮っている
三温糖の絵の中に



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 詩人は現実離れしているものだが、それは現実の真相に眼を瞑っているのではなく、詩人にとって生きるとは夢を語ること、現実を創造することに他ならないということなのである。詩人はいつもほんの少しぎこちなく現実を生きてゆく。人生がプロローグとは現象に無闇に踊らされないという信念であり、木枯しの吹く街へいそいそと出かけてゆくのも、「とっぷりした肉」のため、つまり、肉体を思想化するため、永遠の世界を垣間見るためであろう。

やたらと饒舌で色々な言葉を操り、綺麗な名前をつけては毎日物を食べている可笑しくも哀れな愛すべき人間。まるで大根役者のように憎めない。「くちゃくちゃ」という擬音もまた綺麗ではないが生々しい色々な言葉のように響いてくる。そんな現実を詩人は嫌がっているようでもない。かといって、好んでいる訳でもないようだ。

「私の手の中に美しいマコロンを載せるため」に、この詩人は木枯しの吹く街へ前屈みで出てゆく。?マークはそんな詩人の孤独を表象して余りある。生きる目的が「美しいマコロン」を手に入れるためとは、なんと無欲なことであるか。一見奔放で無軌道のようだが、現実への慎ましさがこの詩人の身上であることを語っている。

冬色の絵の具のような、三温糖の絵のような、セザンヌ的静物の世界へ押し出してほしいとは、自然は芸術を模倣しているという確信があるからであろう。
意思を持つが如き木枯しの自在さが詩人には羨ましいとでも言いたげだ。詩人はブラシを揮うように言葉を駆使する。そして今日も淋しい現実に切り込んでゆく。この、とっぷりとした肉の生々しさに欺かれないために。




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この記事へのコメント

FLORENTIA55
2010年10月29日 06:01
芸術テーマに”メメント・モリ”というのがありますが 人生の儚さと戒めているもので チョッと違いますが オーバーラップしました。 言葉は 受け取る側のイメージで形を変えるので 面白いですね。
花てぼ
2010年10月29日 09:04
よい記事と思われましたらポチっとお願い致します。合掌
これに素早く反応してポチ、ポチ、ポチっとしたのは、「木枯らし一号」に対してです。
湘次
2010年10月29日 09:17
おはようございます
 木枯しは詩人の心に共感を生みますね。
yoshiyoshi
2010年10月29日 17:04
蜀椒や落人村は早暮れぬ    よし
いらくさ
2010年10月29日 18:50
私は詩は初めから
再生の旅に取り上げていただこうと
そう思って書いています(笑)

今日は本屋さんがオープンしたので
友達と行ってみました。
なんと65万冊、まるで図書館でした。
綺麗な花のイラストの洋書を
買って帰りました。

いつもながら
丁寧にお読みいただいて
私って果報者?ですね。
ありがとうございました!
まのじ
2010年10月29日 19:25
>「再生の旅に取り上げていただこうと」
あはは!
キュートですね!

時々、自分の人生が借り物のような気がしてなりませんが、そのあたりのニュアンスを絶妙に表現して頂いたみたいです。
市堀
2010年10月30日 17:49
みなさま、コメントありがとうございます。合掌

 FLORENTIA55さま。
仰るとおりですね。言葉は水のように私という器に流れ込んでくるもののようです。おおきく、深く、澄んだ器でいたいですね。

 花てぼさま。
はい、解っております。いらくささまの作品、面白いでしょう?!紹介のし甲斐があるというものです。(笑)

 湘次さま。
詩人はどうも「風」を見方につけたい人種のようですね。せいぜい風邪をひかないように気をつけましょう。

 よしさま。
「暮れてゆくいのち恐ろし山椒の実 玉宗」

 いらくささま。
人は自分にないものに憧れるのか、あるものに憧れるのか、あるけどはっきりしないものに憧れるのか、これは大問題ですな。

 まのじさま。
なるほど、借り物ですか。人生は借りを返しにゆく道程かもしれませんね。日暮れて道遠し、って感じですが・・野垂れ死にも止むを得ません。(笑)

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    Excerpt: 昨日、近畿地方では木枯らしが吹いたようですが、それに関連して枯木龍吟のお話しです。 Weblog: つらつら日暮らし racked: 2010-10-29 06:25