詩の領域・自己を支えるもの

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雨ながら手足明るき花菜かな 玉宗


短歌と俳句と詩のブログ「てらやまメール(http://terayamahe.seesaa.net/)」に次のような詩篇が載せられていた。自己の内面をストレートに語ることの少ない作者には珍しい直截的な内面の心象表現である。ここに困難な現代を健気に生きようとしている一人の人間が見えてくる。


「桜」  

朝目覚めるたび
この手と足と
胴体の為に
朝餉昼餉夕餉を
捧げなければならない
浅ましい私がいる

そして内臓に
あらゆる穀類や果実や草の芽や
切り刻んだ獣の肉さえを溜め込んで
毎日この奇跡のように美しい星の
空気のなかに歩み出るのだ

何故そんな醜い所業を
自分に許せるのだろう

答えはひとつ


私はまだ
不意に泣くことがある
桜のなかに立って
不意に花びらが
私に向かって飛んで来たとき

何千の花びらの
そのなかの十ばかりが
私を目指して
楽しげに舞うとき

私はこの小さな薄紅が
私のなかに秘匿された綺麗なものを
感知して
同胞として吸い寄せられて来るのだと
思いたい

きっと私の体内の
何処か一部が
あくまでも清かな
桜色であるはずなのだ

私は其処を拠り所にして
桜を受け止めるに耐えうる私であると
すっくと垂直に示して
桜の下に立つのだ

右の手は
風のなか
球形の瑠璃碗を
捧げ持つ形に柔らかく丸めて

左手は
不意の
落涙に備えて
乳房と
乳房の
あわいに
泳がせながら


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ものを食うことも、思えば神聖にして、不可避な、切ないことではある。それもこれも「涙」を流すための「所業」であると受け止め、掌の落花の奇跡に思いを寄せる感性。このような繊細な感性が悪意に満ちた現実を生きてゆくことが出来るとは。然し、このような感性が生の人間を支えているのも現実であろう。詩の領域は地に足を着けて確かに私を支えている。

人間は個であるから孤独感を纏うのではない。「秘匿された綺麗なものを感知」できないから孤独なのであろう。
ここには孤独を越えたものへ呼びかける切ない肉声がある。人間を孤独にすることに何かしらの神の意図があったのだろうか。魂だけは繋がることを赦されたことも神様の善意からであろうか。詩人はその可能性に人生を賭けているように見える。
「涙」が真っ直ぐ零れるように、今日も「垂直」に生きていることであろう。





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この記事へのコメント

yoshiyoshi
2011年03月10日 06:15
こんちはと蜥蜴穴より顔を出し   よし
いらくさ
2011年03月10日 09:10
おはようございます。
今朝も揺れて驚きました。

こちらはやっと梅が少し咲いただけ
毎日忘れた頃に雪が飛ぶし・・・・・
まだ桜には思いが至らずにおりましたが

今日はまた私共の昨年の作「桜」ために
お優しい取り計らいを賜りまして
ありがとうございました。

昨日は図書館で
「絶叫、福島泰樹總集篇」
を借りてきました。
日曜の教育テレビで福島泰樹さんが
情熱的にお話されていたので

バイクと海であっけなく
若い命を落とした友人はおりますが
縊死した友人はおりません

が、わたしたんかかいていいですか?

と、自問しながら今読んでいるところです。

それから心配なのですが
私を取り上げていただくと
コメント覧が静かになりません?!
花てぼ
2011年03月10日 12:53
朝一度お読みしていましたが。
“やるせない”発想(私にはこのような詩はかけないので情けなく自分がやるせない、の「やるせない」。)で自分に対する憎悪が渦巻きそうです。
桜の花びらが私に向かっても飛んで来て欲しい。その下で垂直にも立ちたい。
いらくささまのコメントで「ご心配」は無用です。(すみません、ここのグログ主のような発言をしてしまいましたかね。)
湘次
2011年03月11日 08:02
おはようございます
 てらやまメール・・・いいですね。
 ゆっくりと鑑賞させていただきます。
市堀
2011年03月11日 08:44
yoshiyoshiさま。
一句ありがとうございます。啓蟄も過ぎて、いよいよ虫の出番ですね。人にもいろんな虫がいますが・・

 いらくささま。
福島泰樹、知りませんでした。こんなアクティブな歌人がいたのですね。
コメントですか?
コメントは少ないかもしれませんが、アクセスは増加していますので、ご心配なく。(笑)

 花てぼさま。
素敵な詩ですよね。
私に代わってコメント返信ありがとうございます。
どんどんやってください。(笑)

 湘次さま。
どうぞ、ゆっくり鑑賞ください。
紹介した甲斐があるというものです。(笑)
合掌

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