夫人の誕生日

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柿剥いてくれる妻ありしづかな夜 玉宗


十六日は夫人の誕生日だった。お寺に生まれて育った女性である。寺族っていうんだけど、一般的にはどんな風に見られているのかな。喜怒哀楽もちゃんとある同じ人間であることは言うまでもないし、家族は家族なんだけど、やっぱり「仏様」と一緒に暮らしているという一本の筋が通っているんだよね。手前みそだけど。私にとってやはり「仏道の同志」っていう存在だな。

亡くなった板橋禅師が会うたびに言われていた。

「あんたさんはいい奥さんを貰ったね。勿体ないくらいだよ。」

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言われた私にしてみれば、夫人が褒められているのか私が褒められているのか、よく解りかねるばかりだったのだが、まあ、四十年近く一緒に生きてくると「割れ鍋に綴じ蓋」とおもわなくもない。こんな憎まれ口を叩けるのも夫人のお陰かな。
先日、信濃へプチ旅行をしたのにはコロナや加齢現象で引き籠りがちで元気がない私を見かねて、夫人が無計画に引っ張り出したというのが真相だった。

車の運転はいつも私がほとんどするのだが、どちらかと言えば方向音痴で、夫人が助手席にいなければどうもならん。いつもナビゲーターっていうんですか、そんな役割の夫人。思えば、わが人生のナビゲーターでもあることを否定できないことを知らされている昨今。夫人よ、誕生日おめでとう。これからもよろしくね。\(^o^)/
   


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「夜」

いつもただけふをかぎりよ草の花

運動会もどれば家の暗きこと

人生は足から冷ゆる芒かな

耳削ぎしゴッホの黄なり泡立草

破蓮人つ子一人をらぬなり

山のやうな薬もらひぬ秋の暮

亀虫を抛り出したる夜の窓

寝静まるころの虫の音夜の底

枕辺は港の如し夜や永く

靴下のなくて叶はぬ夜なべかな

柿剥いてくれる妻ありしづかな夜

耳塞ぎ眠る鬼の子夜の風



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「飯」

勤行や雁がね寒きあさぼらけ

露けさに飯食ふ僧となりしより

なにもないけどこさへてくれし零余子飯

山里にあがる白煙秋寂びぬ

濁酒や脛に傷ある味がして

炊きあがる湯気も甘きや今年米

栗ご飯これが最後と味へる

夢にまでみたる松茸ご飯かな

定めなき日和とおもひ芋を掘る

腸の一句もならず焼く秋刀魚

枝豆や口から先に生まれたる

地虫鳴く夜や首まで湯に浸かり

嫁がざる姉がこさへし夜食かな

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