俳句大学一日一句鑑賞



123681760_2731171557007935_3209784156368998985_n.jpg『11月25日の一句』

「木星に住ふ算段懐手 直美」

作者はたしか洋裁に通じている筈だが、「懐手」は本来「和服」を着ている折の仕草であることは承知であろう。洋服の場合はさしずめズボンのポケットに両手をつっこむ「ポケット手」ということになろうが、生憎これは季語として認められていない。「懐手」も着物を着る機会が少なくなった現代では忘れられていく「絶滅危惧季語」になるのだろうか。

まあ、それは置いといて。本来手の冷えを温めるための仕草だが、着物を着た子供の懐手は可愛いもんだが、大人のそれは、なにやら生意気というか、自堕落というか、暇人か旦那さんめいてどうも余り近寄りたくはない存在感がある。本人は満更でもないんだろうが、木星に移住したい夢を温めているとは恐れ入った。余程、痛い目に遭った人生なのだろう。

とかなんとか、勝手な妄想を抱かせて頂ける立句に匹敵する一句ではある。木星ととり合わせたことで絶滅危惧種が今に季語が活き返った。というか、てっきり「男性」の懐手と解釈しているんだが、もしかして作者が女性であることからしても男性と決めてかかるのもどうかということになるのかな。女性の懐手か。なくはないだろうが、如何にも女傑だなあ。直美さんの俳句には、どうもそんな風貌が漂う。根っからの俳諧師だね。




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「夫婦」

味噌汁に生きた心地や霜の朝

一人ではままならぬ世ぞ帰り花

湯豆腐や夫婦暮らしも板につき

おいと呼ぶ妻ゐて煮込みおでんかな

風呂吹や旅路なる世を労はりて

坊守の月日重ねし木の葉髪

綿虫来夕餉の飯が炊けるころ

小春日や夫婦茶碗も古りにけり

だらだらと過ごす狸の来る夜は

過ぎしこと語り合うたる炬燵かな

雪が来る前のしづけさ夜を灯し

狐火や送り送られ二人きり


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「徒然に」

徒然に冬鳥一羽見たるのみ

旅の途の風かとおもふ翁の日

竃火のさざ波立つや神の留守

着膨れて徒なることに身を窶し

山寺や草鞋に滲みる冬の雨

風あれば潮の香少し能登時雨

腸の一句もならず湯冷めせる

寒き世に一人鈴振るばかりなり

うたた寝を咎める母のゐて小春

さ迷へる旅の途中や冬木立


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