吾輩は猫であるのこころ

ボーナスと縁なき暮らし着膨れぬ 玉宗
吾輩は猫である。
お世話になっているお寺の住職が地元の新聞を見ていて、公務員にボーナスが出たという記事を読んだらしく、妙に落ち込んでいた。賞与っていうんですか、いつごろからの人間様の習慣なんだろうね。よくわからんが、もしかしてお盆やお正月を気前よく、気持ちよく、ひもじくない様にという先人の知恵の賜物なんかな。
盆正月と言えば、お坊さんが忙しく走る廻っているけど、あれは稼ぎ時でもあるということなのかな。夏冬二回のボーナスがでる時期と重なるというのも偶然とも思えない。
まあ、わがお寺ではそんなご多忙に預かっている風でもないけどね。ときどき盗み食いに台所に入り込むんだけで、追っかけ回す住職だけど、少し頼りないけど根っからの悪人ではないようだ。
これ見よがしに余り物や出し殻や残飯を喰わせてもらっている。どちらかと言えばケチな男だ。粗食のお陰で長生きできそうだけどね。
それにしても、おぼうさんという動物ってのは、つくづく自分のことはさて置いて人さんにお説教を垂れたがるから面倒だ。ボーナスが出ないからと凹むような人間がねえ。おこがましいというより哀れだな。
お釈迦様は道端に落ちている金塊を見て「そこに毒蛇がいる」と言ったとか言わなかったとか。やっぱり本物は違うねえ。偉いもんだ。
猫であるわしだって、本物を敬うのに吝かじゃないよ。うちの住職も俳句にうつつを抜かしてばかりいないで、もう少し猫を見習って欲しいもんだ。まあ、どうでもいいけどね。好きなように生きればいいさ。\(^o^)/

「小立野辺り」
煤逃や加賀も小立野辺りまで
行きずりの誰彼遠し十二月
雪を待つ金沢城下夜の街
冬鳥や天徳院の森深く
だれもみな胸に燠秘めゆく師走
金沢の銀杏落葉に別れけり
帰るさのバス待つ雨の冷たさに
人混みに流されてゆく寒さかな
行き交へる広坂木の葉舞ふ風に
灯も濡るゝ片町雪しぐれ
狐火や東兼六鶴林寺
城下なる夜の向かうやインパネス
内灘の夜空揺るがし雪起し

「初雪」
あかときの仄かに雪の気配あり
毛嵐や輪島朝市曳売り女
勤行に濡るる睫毛や雪安居
初雪や人と別れし者ばかり
降る雪やしづかに人を恕すべく
眼帯のまなこ一つに冬景色
吹雪たる浜に目瞑る鴎かな
鰰や獣染みたる夜の海
天を衝く能登の荒海寒波來る
海に入る吹雪をおもひ眠るなり
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