一枚の葉書・内山興正老師の生き方

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裸木となりて百日雲を呼ぶ 玉宗

本棚の整理をしていたら次のような葉書が出て来た。↓ 

「金沢市長坂町ルー十  大乗寺御山内 山中玉宗様
八月二十八日  信州にて  内山興正 」

消印には塩尻・60 8.29 12-18とある。「塩尻・60」は、大乗寺に再安居していた頃だから昭和60年のことだろうか。旧姓の山中で雲水の青春をしていた時代が懐かしい。

宗門内では沢木興道、内山興正各老師の系譜を知らないものはいないだろう。
宿無し興道と愛称された骨太の沢木老師とは対照的に、内山老師は神学校を出て出家なさったほどの繊細なお方と私には見受けられた。いづれにしても、どちらも坐禅を人生の柱とされ生きぬかれたということに異論はないだろう。

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どのようなご縁で宇治木幡の庵を訪ねるようになったのか。

曖昧なところがあり、うまく思い出せないのだが、夏の真っ盛り、雲水の行脚姿で庵の前に立って面会を乞うているところから記憶が始まっている。玄関に出ていらした老師は、いやはやという面持ちで私に言われるのであった。「そんな仰々しい恰好でおいでにならなくても、、」 訪ねる前に何度かお手紙を差し上げて詩のようなものを書き送ったり、修行の行き詰まりを吐露してはいたのだが、仰々しいと言われると穴があったら入りたいという気持ちになってしまった。

座敷に招かれ、お茶を戴きながらお話をうかがうことができた。質素な庵に二人きりになり、一方的に老師のお話を聞くばかり。未熟な雲水に老師は丁寧に、穏かに語りかけられていた。
内容は覚えていないのだが、不思議にその語り口というか、雰囲気だけは未だに忘れられない。それはある意味、禅匠という先入観を払い去るに余りあるものであったが、厳かなものであったことも事実である。内山老師にも冒しがたい領域がおありなのだなと感じていた。

結局私は自分の行き詰まりなど取るに足りない、なんともないものなのだ、と気づかさせて頂いたのである。気づいたのではあるが、それで解決という訳にはいかないのが、修行の、いや私のややこしいところ。内山興正という本物の鏡に映った自分の姿。私には未だその正体を直視する力量もなかったのである。

その時に、老師から兵庫県浜坂に移った安泰寺のことなどを教えていただいたのだが、実際に安泰寺へ安居することになるのはまだ少し先のことになるのであった。

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といような訳で、私は大乗寺へ戻り、修行を続けていた。内山老師と別れた後も、何度か手紙を出して妄想を吐露していたのだろう。それに対しての返信である。

「拝復 その後、真撃なご修行生活おつづけのこと、何よりと嬉しく思います。どうぞこの上ともご精進祈ります。沢木老師もよくいわれておりました。行雲流水、ワラジをはき、足にマメをつくりながら、方々歩きまわるのも、結局は自己を求めて修行するのであると。
結局「自分を生きるのは自己以外にはなく、浮かぶのも、沈むのも自分もち」です。どうぞこの上とも、脚下をしっかりふみしめて、修行しぬいて下さい。この上ともお大切に。
私、今夏いささか健康を害し、信州にて夏をすごさせていただいており、回送されてきてお手紙拝見。ご返事おくれました。おかげ様にて私だんだんと元気です。早々」


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老師の下で安居修行し、その法筵に列することはなかった私なのであるが、芳しくない体調の中で、どこの馬の骨とも知れぬ雲水に肉声のお言葉を下さっていることに感激を新たにしている。自己を自己として生き抜かれた禅匠にして、この心使い。若い修行者へも真摯に真向かう老師の生きる姿勢が、その面影とともに蘇ってくる。

宗門人の、老師への評価は様々であるのかもしれないが、人間として、仏弟子として、余所見をせずに真っ当に生きている人間の頼もしさ、自在さ、というものを私は抱いている。人間的には不器用なお方だったのではなかろうか。それがそのまま仏法を介してお坊さんとしての魅力になっているような。

現代でも「今良寛」として注目されるお坊さんが時々居られる。内山老師自身はそのように呼ばれることを嫌がったであろうが、私の中では良寛さまの俤に最も近いイメージをもっているお方である。






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