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zoom RSS 天の邪鬼はだれだ?!・「山椒魚は悲しんだ」

<<   作成日時 : 2011/03/31 04:17   >>

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水仙のこの一徹の香を愛す 玉宗


井伏鱒二の小説『山椒魚』は中学か高校のときの教科書に出ていたと記憶しているのだが、最後に漏らす登場人物の呟き「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」が未だに忘れられないでいる。

小説の書き出しは次のようなものである。 

山椒魚は悲しんだ。
彼は彼の棲家である岩屋から外に出てみようとしたのであるが、頭が出口につかえて外に出ることができなかったのである。今はもはや、彼にとっては永遠の棲家である岩屋は、出入口のところがそんなに狭かった。そして、ほの暗かった。強いて出て行こうとこころみると、彼の頭は出入口を塞ぐコロップの栓となるにすぎなくて、それはまる二年の間に彼の体が発育した証拠にこそはなったが、彼を狼狽させ且つ悲しませるには十分であったのだ。
「何たる失策であることか!」 
(以下略)

岩屋から出られなくなった山椒魚は、日々を鬱々として過ごすうちに、紛れ込んできた蛙を自分と同じ状態にしてやろうと閉じ込めてしまう。初めは口論ばかりしていた山椒魚と蛙が、2年が過ぎたある夏、蛙の嘆息をきっかけに和解して終わるというものである。最後の台詞は蛙のものだと思うのだが、もしかしたら山椒魚のものかもしれない。手元に本がないので確認できないが、この台詞の前に「おまえは私のことをどうおもっているようなのだろうか?」というような、鬱屈した、一筋縄ではない心理の問いかけがあった筈だが。それに対する答えが次の最後の台詞であったと思う。

「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」

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以前から、井伏鱒二の作品は人生の寓話性の強い作品として受け取っていた。「山椒魚」もまたそうである。今回、記事に取り上げたのも、東日本大震災に際して、日本国内は勿論、世界各国からの災害復興援助、支援の様子を見ていて、人間社会の一筋縄でいかない、そうして案ずるより産むが易い現実の不思議さに思いが至ったからである。

普段、なんともない日常では、損得や駆け引きに終始したり、自他の垣根に執着したり、自分持ちの世界に拘るというような天の邪鬼的なところがあるのも人間である。その一方で、国民的大きな災害、又は国家的危機に遭ったとき、我々個人の中には、他人事として放ってはおけないという感情、心理があるらしい。

昨日まで、口もきかなかった隣人が同じ被災者となり痛みや不安を分かち合える存在になり、嘗て戦争を交えた国や領土問題でギクシャクしていた国が日本の復興へ手を差し伸べてくれたりする現実がある。この世は一蓮托生であることをいやがうえでも知らされるからであろうか。

「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」「今でもべつにあなたのことは嫌いではないんだ」「今でもべつに好き好んで争いたくはないんだ」「今でもべつに自分が一番かわいいわけじゃないんだ」「今でもべつにひとりぼっちでいたいわけじゃないんだ」「今でもべつに・・・・・」

人の深層心理と言ってもいいような、こんな思いがあることに気付くのである。それがどうして、平穏な日常時になるといざこざを起こしたくなるのだろうか?小は人間同士の付き合いから、大は国家的依存関係まで、「天の邪鬼」が抜き難く棲みついているように思われてならない。まるで天の邪鬼な人間心理の淵に迷い込んだかのような有り様である。

「今でもべつに人間をおこっているわけではないんだ」

神様は時々そんな呟きを吐きながら、天変地異を起こして人間の天の邪鬼を戒めているかの如くである。災害に遭うたびに人間は自然の中で生きる謙虚さを学んできたのではなかったのだろうか?今回の大災害も又、自然とともに生きてゆかざるを得ない人間の英知となるような謙虚さを育ててほしいものである。






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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
おはようございます
 それにしても今回はあまりにも大きな試練ですね。
湘次
2011/03/31 07:48
こんにちは。
あれだけ悪態をつきミサイルを向けていた
北朝鮮も義援金を送ってきたのには びっくりしました。人間はこういう時は邪気を脱ぎたくなるんですね。
天もきっと 見ていてくれることを切に祈りたいです。
ルフレママ
2011/03/31 15:09
 湘次さま。
そうですね。自然災害では未曾有でしょうね。
あの戦争の惨禍をくぐりぬけてきた日本ですから、あきらめないでほしいですね。

 ルフレママさま。
在日の同胞への思いもあったのでしょうが、お気持ちは有難く頂いておきましょう。
合掌
市堀
2011/04/01 06:48

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