再生への旅

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zoom RSS 俳句のメルトダウン

<<   作成日時 : 2011/08/02 06:46   >>

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母溺れゐる青田波の向う側 玉宗


時々、いったい何のために実利にもならぬ俳句を作り続けるのであろうかと思うことがある。嘗て、H氏賞選考委員も務めた「風」同人の西垣脩氏は次のようなことを語っている。

「句をつくるということは、日常性に垂直な精神の軸を立てその場に刻々の自己を確認する操作であって、人間として生きるために択んだことだ。不完全な混乱した日常体験が表現によって完全な意味ある体験として秩序づけられるところに、詩の存在の意義がある、」 (「風」昭和35年9月号)

「日常性に垂直な精神の軸を立てる」とはどういうことか。

私という生き物を観察してみるに、具体的、現実的、散文的助走をする社会的横軸の生き物でもあるとともに、自己の命の深みに向かう哲学的、実存的、そして韻文的アプローチというものがある。

そして、そのような本来意義深い日常を何気なく流されるようにやり過ごしている私がいる。
「今が大事、今が大事」と言いながらも、その真相は目先の事象に奔走しているにすぎない空しさがある。

俳句はあからさまにものの言えない詩形ではあるが、それは沈黙の詩形といってもいいものだ。沈黙だけが命の深さと対峙できるのかもしれない。日常における命の垂直軸と水平軸によって構築される世界。詩はそのような懐の深い沈黙の世界へ通じる道の一つではなかろうか。
私にとって俳句を作り続けることは、そのような精神の軌跡であり、いのちの表現であってほしい。

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ところで、今回、二つの俳句大会が続いて起こった事例であるのだが、二重投句があった。一方は特選になったものが、一方において入選句。二重投句を遠慮してくださいと予め規定する実行委員会もあるが、それ以前に、私などは短詩形作者の常識ではないかと思っていた。人に認められたいという思いは解らなくもないが、文芸にも礼儀というものがあるのではないかということだ。

大会前に早速、実行委員会に連絡を入れたのだが、その対応は意外なものだった。
「わたくしどもの大会は二重投句の禁止を規定していませんでしたので、今回は問題ないということでお願いします。」

お願いしますとはどういう意味かと暫し考えたが、已む無くその旨趣に従った。然し、つらつら思うに、大会事務局には問題ないかもしれないが、選者にしてみれば結構、恥ずかしいものがある。詐欺とまでは言わないが、これはある意味、選者への挑戦である。俳諧の目的がどこにあるのか、改めて思い知らされる。特に、現代のような巨大化した大衆文芸のマッスの中では尚更に、その存続意義が変質してしまったのだろうかと言いたくなる。

芭蕉さんの昔から、懸賞金目当ての俳諧荒らしがあとを絶たない。これも短詩形文学の宿命であろうかと思わないでもない。そんなことに目くじらを立てなくともという見解もあるだろうが、このようなことがあれば、大会そのものの質や品格が問われることになるだろう。もっと言えば、俳句そのものの軸がメルトダウンしかねない。

俳句が精神的垂直軸であることをやめたとき、俳句は単なる芸事であるという水平軸の地平に自足し終わるであろう。そこには俳句の文学性を語る資格はないと言ってよい。






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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
 H氏賞というのは数十年前に親戚が受賞して初めて知りました。Mさんは肺を病んで若くして亡くなりました。下手なバイオリンなど奏でていたことをセピア色の思い出としてたたんであります。Mさんが出した「動物哀歌」というタイトルの本がありましたが、今は絶版かもしれません。
 選者もいろいろご苦労があるのですね。
くろちゃん
2011/08/02 08:02
 くろちゃんさま。
村上昭夫という方ですね。知りませんでした。昔は夭折する詩人が多かったのですね。
私の場合など、選者の苦労と云ったものではなく、選者の愚痴の類です。(笑)
まあ、いづれにしても、作品が世界で一人だけでも解ってくれる読者がいることでyとしとする生き方もあるのではないかと、思ったりしています。
合掌
市堀
2011/08/02 19:38

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