再生への旅

アクセスカウンタ

zoom RSS もう一人の自己に出会うために

<<   作成日時 : 2012/04/02 03:33   >>

トラックバック 0 / コメント 3

画像


万愚節と思ふスクランブル交差点 玉宗

その筋の情報によると、専門僧堂に修行に入ったわが弟子。五日間の旦過寮(隔離期間』をクリアーして正式に入堂を許されたらしい。ひと安心といったところではあるがこれからが本番。これで倅が私たちに手の届かない地平に進んだことを実感した。何もかも僧堂に委ねたのだから、似て食うなり焼いて食うなり、親も師匠も手出しは出来ない。とは、言いながら、早速、大衆さん達のおやつ用に菓子を差し入れしたりしている次第。

一日は毎月恒例の托鉢である。昨日は朝から冬に逆戻りしたような寒さ。風も強く霰交じりの天気だった。生れて初めての托鉢にオロオロしたのではなかろうか。約一時間に及び町内を流して回る。その間お経を唱え続ける。喜捨を受けたら施主の前に応量器を捧げ持ちながら、「財法二施 功徳無量 檀波羅蜜 具足円満 乃至 法界平等利益」と大きな声で偈文を回向する。托鉢中のお経も偈文もまだ暗記していない筈である。みんなに遅れないように歩くだけでも難儀なところ、覚えていない経文のカンぺを見ながら付いて行かなければならない。
夫人は頻りに托鉢をしている倅の姿を見たがっていたが、師匠はとても正視に耐えられない。お寺の中で、托鉢一行の鈴の音が過ぎるのを待っていた。

大きな声と言えば、上山前に新到挨拶の練習をしたところ、蚊の鳴くような声で呆れたものだ。そのときに倅は大きな声を出したことのない男であることに気付いた。

「御開山拝登 並びに 免掛塔よろしう!」
「興禅寺徒弟 市堀孝宗 どうぞよろしう!」

「やってみなさい」
「・・・・ごかいさんはいとう・・・ならびに・・めん?・・めんかたよろしう〜」
「こうぜんじとてい・・・いちぼりこうしゅう・・どうぞよろしう・・・」

「・・・・・・、本番ではもっと大きな声で、お父さんもお母さんも聞いたことのない大きな声を出すんだぞ。大丈夫か・」

「ん〜、大丈夫じゃない・・」

といった反応であったが、さて、どうだったことやら。入門を許されたのだからそれなりの声で反応したのだろう。
お寺の子であるから少しは仏を中心にした暮らしの雰囲気は知っているのだろうが、僧堂は又別カルチャー。一事が万事、家庭や学生生活とは違った質量の日常が始まっている。
入堂してからは、仕切りのない団体生活である。坐禅、就寝は坐禅堂。日中は衆寮で過ごし、看経も作務も食事も、基本的には常に衆と共にある。大衆一如といってイワシの群れではないが、何人いても仏道に向かって一つの方向性を維持してゆく。個性といったものを必要としない。裏表、穏顕なく生きて行かなければならない。隠し事なく、拘るべきものなく、無一物。それが仏弟子の還るべき家である。


叢林とも別称されるように、修行は競争ではない。能力も見た目も高低差がある者たちが集まり、芋の子を洗うが如き行住坐臥。その月日が知らぬ間に角の取れた人間とさせ、まあるい人格のお坊さんを育てる。それぞれがそれぞれの器で以って自己克己の精進をし、自律他律の中で真っ直ぐに天に伸びて行く。究極の個性尊重である。否、命尊重である。
何度も言うが、修行と言っても、自己が自己に落ち着くだけの話であり、道程である。その歩みを間違わないためにも、しばらくは自己を忘じ、我を離れ、執着を捨てなければならない。無為に還るということであろう。無為になる為の手間が掛るのは、生まれて此の方身に付き、心に付いた癖がある証拠。自他の二見を断ち、命あるがままのなんともないところを狙って精進しなけらばならない。自力である所以だ。それは作為ではない。

我見を離れる精進をしていれば、もう一人の自分に出会える日が必ず来る。余所見をせずに、まっすぐ修行することを願うばかりだ。










にほんブログ村 哲学・思想ブログ 禅・坐禅へ

にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人間・いのちへ


テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
入道本当におめでとうございます。

こちらは・・春吹雪きです。1日の托鉢は、ご子息様には、大変だった事でしょう。

上山前の師匠との練習風景を読み
可笑しさと・・切なさを噛み締めました。
たか子
2012/04/02 11:47
百歩行き百歩返って初桜  よし
yoshiyoshi
2012/04/03 07:27
たか子様。
コメントありがとうございます。
これから暖かくなるので、修行にも実が入るでしょう。いや、気が入らないかも。(笑)
まあ、なるようにしかなりません。師匠はお手上げです。

yoshiyoshi様。
百歩も一歩も、自己の脚下。それを照顧しながらの修行ですね。
市堀
2012/04/03 10:09

コメントする help

ニックネーム
本 文
もう一人の自己に出会うために 再生への旅/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる