再生への旅

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zoom RSS 今日の諸行無常 「海のある風景」

<<   作成日時 : 2012/06/28 03:58   >>

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烏賊釣りの漁火ひとつ父のもの 玉宗

先日、輪島市門前町の鹿磯漁港で四十年ぶりに再会した幼馴染は故郷の同じ町に育ち中学校まで一緒であったおとこである。今では押しも押されぬ逞しい海の男として日本海、太平洋を魚を追って渡り歩いていた。能登半島から烏賊を追って日本海を北上する漁法があるとは最近まで知らなかった。

私は北海道函館市の出身である。函館といっても合併される以前は、「北海道茅部郡南茅部町」という渡島半島噴火湾沿いの漁師町である。そこで漁師の次男坊として生まれ、成人してまもなく出家の道を選択するまでを過ごした。故郷は昆布の生産地として有名であるが、定置網漁も盛んなところである。そして烏賊釣り漁の時季になると噴火湾の沖に漁火が不夜城の如く明るく輝くのである。
父も烏賊釣り漁をしていたが専ら噴火湾近海である。漁に出る日の夕方になると父は私に焼酎を買いに走らせた。いつも四合瓶と決まっていた。父はそれを持って夜の烏賊釣り漁に向かうのである。沖に並んだ漁火の一つが父の乗った船の漁火なのだと子供ながらに納得していたものだった。
「どうか無事でありますように・・・大漁でありますように・・」そんな思いを抱きながら眠りに就くのが常であった。

次の日の朝は水揚げされた烏賊を捌く仕事が陸で待っている。母は勿論、私達子供も手伝いに駆り出されたものである。烏賊は「マキリ」と呼ばれる烏賊割き専用の包丁で捌かれる。開いた烏賊を干していくのは子供の仕事となっていた。ときには町の加工場から助太刀を頼まれ出掛けることがあった。そこでは烏賊ひと箱を干してはいくらかの手間賃が貰えた。小遣い稼ぎに必死になったものである。

昆布漁や定置網漁、そして烏賊釣り漁。いづれも夏場が忙しく浜にも活気が溢れる。家族と地域の人達と共にあった海のある風景。

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私は海が嫌いではない。
海の厳しさも優しさも知っているつもりである。それはまるで両親や家族と過ごした日々にある光と影のように私を慰め、そして苛める。どうして故郷を離れることになってしまったのか。それも今となっては運命の廻り合せとしか言い逃れができない。

そんな私も内地で生きてきた人生の方が長くなってしまった。故郷には本家の墓がまだある。それを守ってきたのは二つ違いの兄であったが、父の跡を継がず好きな道に進んだ兄も三年前に作業中の事故で亡くなった。亡くなるひと月ほど前に久しぶりに兄と電話で話した。最後に実家のお墓の事に話が及び、名前だけでも継いでいる長子ということもあり次のようなことを口にした。

「ちゃんとお墓を守ってね。ほったらかして置くと罰が当たるよ。」

それから間もなくの事故死であった。実の兄ということもあって何気なく云ったひと言が今も悔やまれるし、偶然とは言い切れない因縁を感じている。

私もまた父の跡を継がなかった。先日、朝の勤行中に、ふと「俺も死ぬときは事故で死ぬだろうな」と感じた。どうもそんな気がする。兄と同じように故郷を離れ家業を次ぐこともできなかった人間の、それが定まった運命でもあるかのように。海のある風景を離れた人間の宿命でもあるかのように。生れ育ったところで一生を終えることの幸いというものがあろう。私にはそれが叶わなかった。
烏賊釣り漁が廻り合せた四十年振りになる幼馴染との再会。そこには故郷を離れた人間の持つ罪悪感のようなものが確かにあった。苗字も変わってしまった私であるが、お墓の管理がどうなっているのか改めて気になったことである。







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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
誰も彼も屈託ありき鮎の宿  よし
yoshiyoshi
2012/06/28 04:25
フローレンスからボナセーラ
故郷のお墓参りお出かけになられてはいかがですか?気になることは先延ばしにしない方が良いと思います。心がちょっと弱くなってはいませんか?
Florentia55
2012/06/28 06:06
私の母は漁師の娘でした。子どもの頃、長い休みがあると潮の匂いの中で過ごしました。父は建具屋。長男の私。実家もすでになく、墓もまだ修理していない親不孝者です。
加藤 宙
2012/06/28 08:43
こんにちは。
幼友達との再会は ご先祖様の引き合わせかもしれませんね。そんな気がしてならないです。
私も 死ぬ時は、母のように心筋梗塞か、父の肺炎か、などと思うようになりました。
先日 父の十三回忌、弟の十七回忌を終えることが出来、ホッとしています。
と、同時に近くなって来たと感じました。
ルフレママ
2012/06/28 16:19
亡くなった父も漁師でした。烏賊釣り船に乗っていましたから朝帰ってきたら イカ墨で顔が真っ黒でした。

昨年 港で石川県の烏賊釣り船を見かけました。写真を撮りました。ご夫婦で乗っていらして、奥様とお話しました。

文中に日本海を北上・・と有りましたので
偶然なので コメントさせていただきました。
たか子
2012/06/28 16:23
yoshiyoshi樣。
「誰も彼も屈託ありき鮎の宿」上手いですな。

Florentia55樣。
大丈夫ですよ。ありがとうございます。

加藤 宙樣。
最近、いのちの繋がり、切れながら切れていないいのちの繋がりを強く感じます。だからこそ真摯に生きて行かなければと。

ルフレママ樣。
<父君十三回忌、弟君十七回忌>
御苦労さまでした。合掌

たか子様。
おお、石川県から行っているのですね。それもご夫婦で。皆さん、ご苦労なさっているのですね。





市堀
2012/06/30 20:20

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