再生への旅

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zoom RSS 室蘭の思い出

<<   作成日時 : 2013/04/25 04:38   >>

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白雲と光りをきそひ山桜 玉宗

昨年の秋、札幌郊外のお寺の落慶法要に随喜した。結果として夫人と弟子と私の三人という家族旅行のような仕儀になってしまった。嫌いな飛行機に乗ったことは苦々しいが、まあ、良い思い出になったことは幸いである。
暫く生まれ故郷の北海道へ行くこともないだろうと思っていたところへ、先日、室蘭のお寺から来月になった開山忌の説教を依頼された。勿論、知らないお寺ではない。もうかれこれ三十年近くもなる昔、役僧としてお世話になっていたことのある宗門寺院である。

永福寺の婿養子になって、前年に長女が生まれていた。先代の住職は私に祖院へ安居でもしてほしかったようであるが、それまで大乗寺などで雲水修行を済ませていた私は、子供も生まれ暢気に安居でもないだろうという生意気な気持ちもあり、内心鬱々としていたのである。檀家のない永福寺で扶養家族が増えたことの負担を婿なりに案じていたのである。師匠は私に働いて欲しいなどといった思いはなかったが、永福寺の本寺でもある門前の祖院に安居し、役寮にでもなって出仕できれば、と言った希望が少しはあったようだ。

その後知人の伝を頼って「役僧」と呼ばれる、檀家の多いお寺の「雇い坊さん」として勤めることになった。それが今回、お説教の依頼があった室蘭のお寺である。お寺に入って間もなく、子供も出来て落ち着いていたいところではあったが、家族の為にといった勢いとともに、婿養子の重圧のような息苦しさも実はあったのである。例によって逃げの姿勢がどこかにあったことは事実である。

夫人は反対はしなかった。当初は単身赴任で、仕事に慣れたら妻子を呼ぶと云う事で一人室蘭へ旅立った。
役僧は初めての経験である。アパートと車を宛がわれ、お檀家さんの月命日のお経を勤めに伺う。それを毎日午前午後と繰り返す。お葬儀の出来たときはその合間を見てお寺や葬儀場を行ったり来たりする。冬場の車の運転は不安もあったが、スパイクタイヤという便利なものがあったので事故を起こすこともなかった。そのスパイクタイヤの影響であろう、春先の粉塵がひどいものであった。室蘭と言えばあの粉塵を思い出す。

半年ほどして夫人と二歳になった長女を室蘭に呼んだ。アパートでの親子三人水入らずの生活が始まったのである。それもまた私にとっては初めてのこと。家長として妻子を養っているといった実感が涌いたものである。休みの日には車でピクニックに出掛けたりした。アパートの後ろが岬の山になっており、その山道を行くと地球岬という絶景が見渡せるのである。私は出来るだけ無駄使いをせず、貯蓄をして家族の生活を支えることを考えていた。もとよりお坊さんであるから、遊ぶといった観念も薄かったが。まだ俳句も本格的にしていなかった私の楽しみと言えば、家族と一緒にいる時間、家族の為に働いている時間を生きていること、そのものであったのだろう。
夫人も私もまだ三十歳そこそこの若いころの話である。

楽しい思い出の多い室蘭での暮らしではあったが、いつまでも輪島のお寺を先代に任せて置くわけにもいかず、また、私自身の中にも役僧で生きることへの忸怩たる思いもあって、三年目に自坊へ戻った。その後長男も生まれ、私は意を決して祖院へ雲水として一から安居した。数年後には役寮として認めて頂くことも出来、又、門前の興禅寺との縁も生まれた。

「法輪転ずれば食輪転ずと言って、檀家が少なくても、お坊さんとしてやるべきことをやっていればお天道さんはちゃんと食べさせてくれる。」

身を節し心を節するお手本のようなお坊さんであった先代住職。夫人の実父でもあり、明治43年生まれの人間の口癖であった。本山の直末寺院であることを誇りに、いつも「本山さん、本山さん」と崇めていたお坊さんである。一カ寺の住職になることの道筋、道理を身を以って教えてくれていたのである。

そんな先師も能登半島地震の前年に他界した。室蘭で娘夫婦が子供と三人で暮らしていたことを大いに心配していたでことであろうと今になって気付く。急がば回れ、というより、急ぐあまりに遠回りをしているような私である。実に親不孝な弟子ではあった。

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「薊」

隠れ棲む山に恋ある薊かな

野に溺れ薊は花を焦がしけり

山賊の裔の里なる鬼薊

夜は星の滴る峡の薊かな

なんでもある実家の暗さ種俵

肉厚の春椎茸の舌を噛む

ものの芽のつんつんつんと一人きり

揩スけし花の壺置く水芭蕉

昼蛙腹が膨れて眠くなり

夕蛙帰つてくれと言へもせず

死が見えてしまへり菠蓮草茹でる

明日葉やきつとあかるい海がある

花は葉に少年餓ゑに悩みをり



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