再生への旅

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zoom RSS 「ありのまま」という曲者

<<   作成日時 : 2013/05/30 04:19   >>

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芍薬の花地に垂れて雨上がる 玉宗

「ありのままに生きる」とか「ありのままに見る」「ありのままに感じる」などといった「ありのまま」を冠したことばがある。私自身もこのブログで何気なく使っている「ありのまま」。それって「おまえだけのありのままだろう」と切り返される前に「ありのまま」の正体を定義して置いた方がいいんじゃなかろうかと些か心配になった。

「一水四見」という譬えがある。
一水四見(いっすいしけん)とは唯識のものの見方だそうで、認識の主体が変われば認識の対象も変化することの例えとして持ち出される。
人間にとっての河(=水)は 天人にとっては歩くことができる水晶の床 魚にとっては己の住みかとなり、 餓鬼にとっては炎の燃え上がる膿の流れ というように、見る者によって全く違ったものとして現れるといった世界観である。

これは何を言っているのだろうか。ものの見方が色々あってよかったね、みたいなことでもなかろう。
四見に左右される以前の「水」を「ありのまま」とはいうのであろうか。「見る」こともまた「煩悩の然らしむる」ところの「ありのまま」ではないのかといった理屈もあろう。「見」という「ありのまま」が「ありのままの水」を受け入れ、或いは拒否する。世界は自己の「知見・分別」の「後」に現れるかの如くである。そんな「ありのまま」でいいのか。仏道は知見・分別を離れろと試していたのではなかったか。

仏道の威儀とは「知見の先」の事とされるのが理想である。「先」とは「使用以前」ということであろう。「知見・分別」を用いない生き方、感じ方、見方といったものがあるのだろうかと疑いを抱く方もおられよう。「ある」というのが仏道の建前である。言葉を変えれば「事実」は分別や知見に関わりなくあったり、なかったりしている。息を吸い、息を吐くという今のいのちの事実。そこでは眼耳鼻舌身意の六根が六境に反応して六識しているのだという。坐禅は当に「知見の先の威儀」の正門である。典型である。本来いのちは私の知見・分別に汚されずして働いているという信仰がある。それこそが清浄なるものであるという信念がある。

然し、日常に於いて(つまり分別世界に於いて)はこの六根の働きが分別や知見に左右されているといってよい有り様である。そのように揺れている私がいる。それによってぶれて、苦悩し、喜怒哀楽し、右往左往し、迷悟し、生死している私がいる。煩悩の宿命。それでいいのかと自問自答の私がいる。それはいのちありのままでない、といった自己への疎外感、違和感、喪失感、浮遊感がある。それってなんだか途轍もなく勿体ないいのちの使い方ではなかろうかという危機感、焦燥感がある。それは日常を越えると言う名目で現実逃避するためのマインドコントロールだ、と言ってのけられてしまうには如何にも悔しい現実感がある。

根底には人間への不信感が私にはある。欲望への不信感がある。人間をしながら人間を止めたがっている私がいる。欲望を越えた地平への憧れがある。自己を越えたがっている風な私がある。この身このままでなんともなく、救われていたいといったとんでもないいのちへの拘りがある。諸行無常や諸法無我や一切皆苦への期待がある。涅槃寂静、そこはいかにも心満ち足り、広々と、ゆったりとした、なにがあってもなんともない、慈しみに富んだ世界の様相を呈している。

私の「ありのままの思い」とはこの程度の代物である。実は一刻も早く「わたしのありのままの思い」を投げ捨て、脱ぎ捨てたいといった望みが私にはある。「ありのまま」とは実に究極の都合の良さである。それぞれがありのままのいのちを戴いて、真っ直ぐ生き、共になんともない。それこそが私の夢に見る浄土である。「私のありのまま」を越えた「ありのまま」こそが煩悩を捨てるに値する。「ありのまま」もまた一筋縄ではいかない。


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「南風」

南風吹くや雑踏といふ海原に

冥くしづかに水流れをり花菖蒲

峡の空いよいよ蒼し水木咲く

薔薇香るとある男の手の中に

おほでまりご飯こぼすが如く散り

かはたれとほたるぶくろの灯を点す

芍薬の蟻がくすぐる蕾かな

夏雲や手に償ひの供花を垂れ

沖つ風浜昼顔によろこべる

はまなすや沖見え旅の途中なる







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