再生への旅

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zoom RSS 大乗寺新盆の思い出

<<   作成日時 : 2014/07/13 21:41   >>

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極道がぶらさげて来る西瓜かな 玉宗

金沢市は新盆である。大乗寺山、野田山にはお墓が群を成しており、それぞれ霊園墓地として整備されている。私が安居していた昭和五十年代は板橋興宗禅師が住職をしておられ、境内に接する墓地も又、老師の指示によって整備され始めていた。七月に入ると間もなく、山内は「墓作務」に精を出す日々が続く。大衆さんの数も少なかったので墓掃除の人夫さんを頼んでいた。お地蔵さんの赤い前掛けもどなたかが新調してくださる。私はその新しい前掛けをお地蔵さんに掛け替える役目を買って出ては過酷な墓掃除作務を少しでも逃れようとしたりしていた。

大乗寺ではお盆の棚経はなく、専らお墓でのお勤めをした。三日間、朝から晩まで、墓地の一角を陣取ってテントを張り、お墓参りにくる人からの声掛けを待つのである。お墓でお経を挙げ先祖へ回向する。一つのお墓に何度もお勤めをすることもある。親戚筋の方々が銘々お参りの都度、お坊さんにお経を挙げて貰うのである。炎天下でのお勤めは結構きついものがあったが、大乗寺の境内は樹木が多く、木陰に逃れては涼んでいたりしていた。

夕方になると墓前に飾られたキリコと呼ばれる灯篭に灯が入る。日が落ちてからお墓参りする人もあり、キリコと蝋燭の明かりの前でお経を挙げていた。大悲心陀羅尼というお経をを日に何回となく誦むのだが、若気の至りで、大悲心陀羅尼にも飽きてしまい、頼まれもしないのに瑞応寺僧堂で覚えたご詠歌を一節唱えたりして一人悦に入っていた。

独身でもあり雲水としての僧堂生活は自己確立の生き方だという貴族的、特権階級的思いが濃厚であった当時の私には、お盆のお墓参りという社会的貢献、人様のお役に立つこと、社会に関わっているのが新鮮でもあった。そして何故か少し淋しい思いも少しあった。恐らくそれは世間、出世間の空気の違いを如実に感じていたからであろう。

参拝者からの声も掛からなくなると真っ暗になった参道を腹を空かせて寺へ戻った。典座寮の板の間で遅めの薬石を戴いていると、住職である板橋老師が入ってきた。

「ご苦労さん。どうだ、西瓜でも食べないか?!」

「いただきま〜す」

見ると、老師は大衆と車座になり胡坐座りをし、西瓜にかぶりついた。その生々しいこと!決して上品という召し上がり方ではなかった。よく見る、あの食べ方である。

「わしは西瓜に目がないんだ。西瓜はこうやってかぶりつくのが一番!玉宗さん、カッコつけていないで食べなさい」

「・・・・・・・」

何故か泣きたくなったことを覚えている。家族というものを離れた自分が、今はお坊さんという不思議な世界の仲間入りをしているのだなあ、という思いが込み上げてきたのである。

その後、私は大乗寺を出たり入ったりして師匠を心配させ通し。なんとか輪島の小さなお寺の婿養子になれたのも師匠の徳を蒙っていただろう。
板橋老師はその後、横浜の大本山總持寺へ晋住され禅師位に就かれる。退董されたのちは越前の御誕生寺を開創され、今も尚、雲水と共に僧堂生活をされていることは周知のところ。

往時茫々の感が深い昨今の私であるが、大乗寺の新盆を思い出すたびに、好物の西瓜にかぶりついていたカッコつけない老師の姿が今でも甦る。その裏表のない、全てを受け入れてくれるお人柄は当時も今も私の中では寸分も違わないものである。人生の恩人の一人であることは言うまでもない。



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「愛」

愛を説く男に水を振る舞へり

キリストの逆鱗に触れ羽抜鶏

ダリア剪る洗ひ晒しの空の下

ゆふぐれは半ばなげやり韮の花

百日草きのふと同じ母の愛

目薬を片手に遠ちの虹仰ぐ

愛がまだ足りぬとばかり飯の汗

触れてゆくものみなさざれ夏の蝶

愛されずして金魚を飼うてみたりもし

毛虫這ふほとほと神に苛まれ


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「花火」

海の上の夜に咲いたる花火かな

裸子のまぶしさに風そよぎけり

捩花の天辺蟻の嘶きぬ

かち割れば嗤ふがごとき西瓜かな

堕落せしごとくに母の夕涼み

貰ひたる金魚とまどふ茶碗かな

箱眼鏡太平洋を押さえこむ

わらんべの声空にあるラムネかな

かき氷掻き込み頭抱へこむ

心太うやむやにして押し出しぬ

冷麦や光りの中を遠く来て

青嵐に打ち寄せられし目覚めかな

豆飯や母のやうなる妻のゐて


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「空の果て」

ふるさとの母の手になる真桑瓜

侏儒となり南瓜花に眠りたし

向日葵や空の果てまで雲流れ

蓮の葉に溺れて花の浮き沈み

いのちほどの火の恋しさよさみだるゝ

咲き誇る高さにこぼれ沙羅の花

生きてゐる肉の冥さや雲の峰

虹立ちてほとほと遠ききのふけふ

雨ながら漁る茨の花陰に

地の果てのそのまた端に居坐りぬ

氷室饅頭頬張る夏を励まして








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