『風』写生・即物具象の指標と系譜(1)

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雪間より振り返りたる訣れかな  玉宗



俳人・沢木欣一が亡くなったのは2001年11月5日。主宰誌であった『風』は、「一代限り」との遺言によって、その死去とともに終刊となった。
『風』は昭和21年5月、金沢の地で同人誌として創刊した。
今でも色褪せたとは思えないその信念・所信をアトランダムに挙げて確認したい。

「われわれは何よりも第一に俳句における文芸性の確立を念願して居ります。生きた人間性の回復、新しい抒情の解放、直面する時代生活感情のいつはらぬ表現。」

その後昭和23年より欣一単独選となる。

「第一に写生、或いは写実。レアリズムを重んずること。自己の感動から勿論句が生まれるのであるが、表現技術としての写生をしっかり身につけてなければ絶対に感動を表現することが出来ない。
写生というのは簡単に言えば対象に即した感動を、それに最も適当な、その時一回限りの動かない言葉で描写することであると思う。
勿論俳句は十七文字形式であるから言葉で描写すると言っても自ら散文と異なった言葉の煮つめた使い方が要求される。あいまいな意味でなく表現技術としての写生を怠っていては実作の上でいくらせっかちに素材や事柄を追求しても真に俳句を新しくすることが出来ない。
中略
俳句の表現の骨格をなす写生或いはレアリズムを一にも二にも望みます。
第二に俳句が散文ではなく韻文であることを銘記していただきたい。散文でもフローベルの言のように唯一回限りの描写が要求された表現ということは厳しいことであるが、詩に於いては一層の厳格な言葉の使い方が要求される。
俳句は最短詩形の故に最も言葉に対する慎重さがなければならない。一語一句もゆるがせにしないで言葉を丁寧に使用していただきたい。言葉を生かしてほしい。

以上二つのことをごく簡単に書きましたが、これは何もむつかしい注文ではなく極めて初心のしかも何十年やってきた人にも適用することだと思います。大変常識的なことのようですが、この二つをすっぽかして進歩はあり得ないと私は確信します。」



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「小主観のムードよりも物の実体を把握しなければいけないと思っているうちに俳句のいさぎよい直截さに魅力を感じるようになった。茂吉が短歌で表現したものを俳句でやれないものかと考えるうちに、俳句は詠うというより結晶させるものであることに気付いた。俳句はものを素直に見ることが初めであり、終わりであると思う」


「句作の態度・方法としては何といっても写生が重要である。写生を古くさいと思ったり、軽んずる人はたいてい途中で停滞し、進歩が止まる」

「昨今の俳句界では写生を古くさい、忌むべきものとする傾向が一般的なようだが、とんでもない話で、今ほど写生が見直されなければならない時期はない」

「俳句は定型詩である。十七音定型を厳密に守るのがよい。季語は重要で季語の本情の理解が大切である。句作の態度、方法は、写生が基本である。詩因(感動)があっての写生、言葉は単純・平明・的確に」

おびただしき靴跡雪に印し征けり  欣一



子規から欣一へ続く写生俳句の真髄と深化を指摘する俳人もいることを付け加えておこう。






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この記事へのコメント

kemm
2010年01月19日 23:58
「俳句は定型詩である。・・・」の最後の明快な言葉は大変参考になりました。迷いながら句作をつづけていましただが、とても気持がすっきりした感じがします。
こんな気持で続けていければと思っています。ありがとうございました。
yoshiyoshi
2010年01月20日 06:35
皮剥けば爪の愛しき蜜柑色     よし
湘次
2010年01月20日 07:05
雪原に先人の道我の道 湘次

目指すところは同じです。
一歩一歩歩んで行きたいと思っています。
陽だまり
2010年01月20日 07:46
市堀玉宗さん おはようございます

雪間より振り返りたる訣れかな  玉宗さん

句作の態度、方法は、写生が基本である。
詩因(感動)があっての写生、
言葉は単純・平明・的確に」

いつもコピーをとって勉強しています。
ありがとうございます。

れいん
2010年01月20日 08:18
その時一回限りの動かない言葉で描写する・・>
・・>動かない言葉、俳句は日々発見ですね。。
写生は難しいですが、賜わった出会いの一句は嬉しいですね。お勉強になりました。
写生
2010年01月20日 13:02
>雪間より振り返りたる訣れかな

青年年時代、アララギ、と云う短歌結社で写生と言う事を繰り返し聞かされました。未だに理解していないことを恥ずかしいと思います。短歌を離れて長い年月経ってから俳句を始めました。
写生
2010年01月20日 13:03
獅子でした。
市堀
2010年01月21日 07:07
皆様、コメントありがとうございます。何事も基本が大事であるのは承知しているのですが、基本を疎かにするのも常でございまして、言うは易く、行うは難いことは省みて明らかなことと忸怩たるものがあります。合掌

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