俳句大学「一日一句鑑賞」

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『11月4日の一句』

「星飛んで漬物石の丸きかな 正則」

 とぼけた感じがいい感じ。とぼけてはいるが小さな発見は小さいながらに確かにある。一直線な流れ星に対応する漬物石の丸さ加減。それは暗い夜空の底なしの丸さ加減、宇宙空間の手応えのなさに比べれば、手にもとれるほどの確かさであり、その不思議さ加減に作者は目を見張るしかないのである。とぼけるしかないわが思いを越えた「ものの実相」がある。そうなるともう小さいとか大きいとか言っている場合ではない。比較を越えている今、ここの様子。世界の絡繰りの発明家は屋根裏部屋や漬物小屋のような市井の中に生きている。まさか自分が発明家だとは信じられない。やはり「丸きかな」と、とぼけるしかないのである。


11月の一句鑑賞をお引き受けした。前回は二か月に渡って鑑賞させて頂いたが、師走はわが寺のような骨山もそれなりに気忙しいということで今回は一カ月ということでお引き受けした。で、前回の様に一句に拘らず好きなだけと行きたいところだが、今回は鑑賞したくなる作品を一句に絞ることにした。創作と鑑賞が表現力を養う両輪とはよく言われるところ。実は、鑑賞者にとって興味をそそられる作品に出会うことが何よりの楽しみであるのは私の創作欲を駆り立てるからである。人様の作品を餌食にしてわが詩嚢を肥やそうとしていることを告白しておこう。

 ということで、11月5日の作品を拝見した結果、今回はなしということでお許し願いたい。一日一句鑑賞を引き受けておいて、それはないだろうと言われるかもしれないが、鑑賞していただけなかったということで市堀の底が知れるのだろうし、又、誠意ある作者には自分の至らなさを自ら顧みて戴きたいと言う意地悪な魂胆もある。どれもこれも学ぶ姿勢のある者には大したことでもないよね。

 であるから、時間的な制約もあるし、毎日鑑賞できるかどうか分からないのだができるだけ目を通して鑑賞文をUPできたらと思っている。なんて我儘なんだろうと我ながら呆れるのだが、まあ、これもご縁ということで楽しくやっていきましょう。というか、みなさん、俳句をしていて楽しいのかな。楽しいんだよね。寛容なる会員の皆さんのご健吟を祈ります。合掌。






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「夢」

冬安居控へし山の静寂かな

雁がねや仏弟子山に籠るころ

もみづるやいつしか夢の色褪せて

色鳥の淋しからめと来たるかに

つばくらの去りにし空のあるばかり

明日知れぬ風に慄く木の葉かな

淋しらの草の色して残る虫

逝く秋や小銭ばかりがよく溜まり

冬が来る木々の騒めき鳥の声

紅葉且つ散るしづけさのありにけり

屋根裏に家出夢見る雁のころ

斜めより日の差してをり杜鵑草

転生を夢みて眠る菜虫かな

仇討ちもならず枯れゆくいぼむしり


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「しづけさ」

冬安居始まる山のしづけさに

切株に刃のにほひ冬立ちぬ

姉さんが東京へゆく霜の朝

枯れてゆく地のしづけさとあかるさと

よく干せて妻の喜ぶ小春かな

味噌汁に生きた心地や神無月

冬となる空のしづけさ欣一忌

初ものの大根を寺に上げにくる

冬眠の蛙起してしまひけり

夜爪切る十一月のしづけさに



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